夜の本気ダンスが生み出した“ボーダーのない熱狂” 岡崎体育、DATSも出演した自主企画を見て

夜ダン『O-BAN-DOSS』レポ

 “夜の本気ダンス”というバンド名は、実際に彼らの曲を聴いたことのない人からしたら「あぁ、ノリのいい、踊れるバンドなんだね」と、安直にイメージ付けされてしまいそうな名前でもある。もし、夜の本気ダンスの4人が単純に「盛り上がる」ことが正解だと思っているのなら、聴き手をただ運動させるだけの淡白で機能的な音楽が生まれていたことだろう。しかし実際は違う。夜の本気ダンスは、「これなら踊りやすいでしょ?」というような、聴き手を馬鹿にした音楽の提示の仕方はしない。彼らが提示する“踊る”という体験の中身は、もっと深く多様なものだ。

 シンガロングなどの一体感を求めるタイミングがあるものの、基本的に固定化されたノリ方をバンドがオーディエンスに求めることはなく、曲ごとにアプローチを変えて生み出されるグルーヴに対して、オーディエンスが自由に反応することを求める。彼らは、“踊らされる”ことと“踊る”ことの違いを知っている。そのグルーヴに乗せて、まるで「踊らされるなよ」と伝えているようだ。つまり、それは「俺たちは好き勝手に本気でやるから、お客さんにも本気で応えて欲しい」ということ。本気でダンスするということは、いつだって主体的な行為なのだと、夜の本気ダンスは知っている。

 そんな“本気ダンス”を奏でる者たちと、それを求める者たちが集まったからこそ、この日の『O-BAN-DOSS』は、ボーダーのない熱狂を生み出すことができたのだろう。こうしたイベントとなると、個々のアーティストのファンたちが、そのバンドの番だけ盛り上がる空間になってしまわないだろうか? とか、あるいはイベントのホストである夜の本気ダンスのファンが、ほかのバンドをどれほど受け入れるのか? とか……そういった点での不安感もあるものだが、この『O-BAN-DOSS』に関しては、そういった不安は一切不要だった。集まった誰もが、“誰のファン”など関係なく、こんなにも熱狂的な音楽が鳴っている空間がある……その状況自体に愛おしさを覚えている感じがした。“楽しまされる”のではなく、“楽しむ”ことを自分で選び、本気で向き合う人たちが集まっていたのだろう。

 「Dance in the rain」はイントロから歓声が上がり、「LOVE CONNECTION」、「By My Side」、「WHERE?」とキラーチューンを連投して本編は終了。アンコールでは「Feel so good」と「TAKE MY HAND」を披露した。特にアンコール2曲の演奏の激しさはすさまじく、まるで暴れ馬のようで、彼らの本気のダンスが、この先もまだまだ途切れることがないことを確信させた。

(写真=浜野カズシ)

■天野史彬(あまのふみあき)
1987年生まれのライター。東京都在住。雑誌編集を経て、2012年よりフリーランスでの活動を開始。音楽関係の記事を中心に多方面で執筆中。Twitter

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夜の本気ダンス オフィシャルサイト

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