椎名林檎、“和の精神”のテーマとの共鳴ーー2020年東京五輪開閉会式演出メンバー選出までの歩み

椎名林檎『逆輸入 〜航空局〜』

 一見、斬新すぎるのではと感じられるものも、音楽・衣装含め徹底した世界観の作り込みによって、広く受け入れられる作品となり、世の中に浸透していく。これこそが椎名が演出家としての側面も持つと言われてきた大きな所以だ。今までにも映画『さくらん』(2007年)や、野田秀樹の上演作品『エッグ』(2012年)の劇中音楽を担当するなど、様々な場所から椎名の演出力が必要とされてきた。

 さらに近年ではSMAP「華麗なる逆襲」、TBS系ドラマ『カルテット』主題歌「おとなの掟」などの提供曲がヒットし、その人物や作品に合わせた魅力を引き出すプロデュース能力の高さも再評価されている。そういった裏方としてのずば抜けた才能を持ち合わせていながら、日本ならではの魅力を新しい形で世界に発信できうるアーティストとして、椎名が選出されたということなのだろう。

 総合統括の狂言師・野村萬斎、五輪統括の映画監督・山崎貴、パラリンピック統括のCMディレクター・佐々木宏を筆頭に、各分野でクリエィテビティを発揮してきた人々が集結して作り上げられる東京五輪・パラリンピック開閉会式。先月末に行われた記者会見で野村は「シンプルかつ和の精神に富んだオリパラになるよう全力を尽くしたい」と述べていたが、このテーマに「和のアーティスト」ともいえる椎名林檎の世界観がどのように反映されるのか、改めて大きな注目が集まっている。

■渡邉満理奈
1991年生まれ。rockin’on.comなどのWEB媒体を中心にコラム/レビュー/ライブレポートを執筆。趣味は読書でビートたけし好き。

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