欅坂46、2年目の『欅共和国』で見せた圧倒的な進化 荻原梓がスケールアップした演出を徹底解説

欅坂46、2年目の『欅共和国』での進化

放水や泡で盛り上げてスタートダッシュする「序盤」

 黒い衣装に身を包んだダンサーたちが行進しながら登場。逆側から白い衣装の平手友梨奈が指を差しながらステージイン。少し遅れて他のメンバーが続く。ダンサーから代表一人と平手が腕をクロスさせると、全体で整列したり、フォーメーションを変えたり、回転したり、対決するような演技を見せる。重厚感のある音楽とともに力強く厳かな雰囲気のあるスタートだ。昨年はメンバーたちによるフラッグの演出であった。今年は”集団行動”である。昨年は不参加となってしまった米谷奈々未もここでは真剣な眼差しで観客を魅了する。全員の意識を一つにすることが必要とされるこのパフォーマンスは、舞台から強い意気込みが伝わってくるものであった。そして「OVERTURE」へ。

 「OVERTURE」を終えると、「世界には愛しかない」の衣装で「危なっかしい計画」を披露。小林由依が「欅共和国、ぶち上がれー!」と叫ぶと観客からは大歓声が起きる。ここで巨大ウォーターショットの出番だ。初日のMCで守屋茜から「この規模でやるのが日本初」だと明かされた通り、最大18,000人収容可能の巨大な会場は”びしょびしょ・ぐちゃぐちゃ”に。可動式のスプリンクラーも四方に4本設置されているため、濡れない者はほぼいない。ラストでも大噴射され、曲が終わっても雨のように水が落下する中、「サイレントマジョリティー」のイントロがかかる。続く「世界には愛しかない」では、今回欠席となってしまった今泉佑唯が担当するパートを小林が務め上げ、また同じくポエトリーリーディングの〈夕立も予測できない未来も嫌いじゃない〉の部分をキャプテン菅井友香が目一杯の笑顔で読み上げると、オーディエンスは大歓声で応える。ラストのサビの直前で、〈僕らの上空に虹が架かった〉と歌った瞬間には、ウォーターショットによって本物の”虹”が架かった。特に2日目の虹は綺麗に現れたので、それによってまた歓声が湧き起こる。花道近くに設置されたバブルマシン、メンバーが持つ巨大ホースなど、とにかくアクセル全開で突き進んだ序盤だった。

 ここで一旦、MCへ。今回、MCを極力排除したことでこの時間はファンにとって貴重な瞬間となる。”曲で魅せる”欅坂46らしい采配だが、3日目において、このイベントで終始研ぎ澄まされた表情を貫いていた平手友梨奈がメンバーからイジられて口を開き自然な笑顔を見せた場面は、確実に後のパフォーマンスや観客の心持ちにも良い影響を与えていたことを記しておきたい。

トロッコや風船を使ってアイドルらしく振る舞う「前半」

 ここからユニット曲が続く。序盤で水浸し&泡まみれになった会場で、〈初めて来た都会は人と人を 洗濯機のようにかき混ぜている〉と歌い出す「青空が違う」、〈バスタブの泡のその中で〉から始まりトロッコで周遊する「バスルームトラベル」、〈キャップが外れ吹き出した泡は止められない〉というフレーズのある「僕たちの戦争」、三輪車に乗りながら〈水しぶきの空に虹が出て 世の中って面白いなって〉と歌う長濱ねるソロ曲「100年待てば」など、曲選びにもしっかりと意図がある。「制服と太陽」では〈窓の外を鳥が横切ってく〉で会場上空に実際に鳥が飛んだ(これは演出ではなく初日に奇跡的に起きた)。

 ここまでくると、逆に「あの曲もできたのでは?」などの声が当然上がる。これだけバブルマシンを多用するのであれば「割れないシャボン玉」は絶好の機会だったのでは? など贅沢な不満を抱いてしまうのは、ある意味、想像力を掻き立ててくれるライブとも言えるだろう。それだけ野外という環境が今の彼女たちにフィットしている証拠なのだ。

 それにしても、後に披露した「二人セゾン」は「サイレントマジョリティー」の半袖衣装で踊ったのに、わざわざ本来通りの「二人セゾン」衣装で披露した「制服と太陽」は、この曲が進路相談の歌であることから、学業専念のために休業中の原田葵へのエールなのだと受け取れる。その一方、今まで追加メンバーを極力入れずに過ごしてきた彼女たちのある種のモラトリアム性――変化を強いられるもどうしても踏ん切りの付かない心情を歌ったものだと解釈したとき、坂道合同オーディションが差し迫る今、この曲を歌ったことで初めて彼女たちは”理想の欅坂46”に別れを告げる準備をし始めたかのように思えて、〈理想なんて 甘い幻想〉と歌う彼女たちからどこか特別な思いを感じずにはいられなかった。いや、そういう深読みをしたくなるほど今回の「制服と太陽」は情感に溢れた素晴らしいものだった。

バトンを受け取ったけやき坂46が会場を湧かす「中盤」

 続く全員参加曲「太陽は見上げる人を選ばない」で欅坂46に続いて入場してきたけやき坂46に、会場から温かい拍手が送られる。けやき坂46の2期生を迎えて初の披露となるこの曲は、両グループの人数差が縮まったことで改めて意味のある楽曲となった。横に広いステージを余すことなく使い、欅坂46とけやき坂46の全参加者37人が交互に整列するという圧巻の光景を見せた。なかなか両グループ合同でライブをすることがない今、この景色は壮観だ。『欅共和国 2018』の中核を担う最も重要な演出の一つであっただろう。

 そこからけやき坂46が舞台を引き継ぎ、落ちついたトークを展開。3日目には加藤史帆が正座しながら「怖いな~、怖いな~」と交えながら怖い話に挑戦し、1万人超えの客席から笑いを掻っさらう。ツアーを終えたばかりの彼女たちは、ライブで一段と盛り上がる楽曲3つをここに引っ提げてやってきた。「期待していない自分」「誰よりも高く跳べ!」「NO WAR in the future」、たった3曲ではあるが大きな爆発力を持ったこれらの楽曲は、僅かなチャンスをモノにするには充分過ぎる選曲であった。

 昨年の『欅共和国 2017』では彼女たちのMCやパフォーマンス中に席を立ったり座ってしまう者が散見されたが、今年はそういったこともなく、ファンから率先して彼女たちを応援しようというような熱い空気があった。こうした変化は彼女たちがこれまで積み重ねてきた努力の賜物だろう。

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