尾崎由香&作家陣が語り合う、歌手としての強みと可能性「曲ごとにまったく違う挑戦があった」

尾崎由香&作家陣が語る1stシングル

「尾崎由香の“大人”な部分を表現した」(沖井礼二)

――なんか譲り合ってますが(笑)。ここからはクリエイターのみなさんに曲ごとのお話をお伺いさせてください。まず表題曲の「LET'S GO JUMP☆」ですが、この曲の作詞作曲編曲を一括して担当された後藤さんは、尾崎さんの魅力を引き出すためにどんな工夫をされましたか?

後藤:(2017年の)年末に初めて顔合わせでご挨拶させていただいたんですけど、その際にスタジオに入ってキーチェック・レコーディングをやってみたんです。ただ、尾崎さんが多忙を極められていらっしゃったこともあって、スタート時間がなんと朝の10時(笑)。「こんな時間だと声帯もまだ起きてないだろうな」と心配しつつ、何パターンか用意したキーで歌っていただいたんですね。でも、これがね、いきなり声が出る出る(笑)。そこでいちばんパリッとしたところに触れて、用意したキーの中でもいちばんキラキラしたものを「これが好きです」「楽勝です!」と言ってくれて(笑)。

尾崎:楽勝とは言ってないです!(笑)。

後藤:ハハハ(笑)。それでテレビのオンエアに向けたプロセスもあったので、まずテレビサイズのレコーディング、そしてフルサイズのレコーディング…と2回現場をご一緒させていただきました。歌詞の世界観に関しては、まずオンエア用1コーラスは『少年アシベ GO! GO! ゴマちゃん』のほのぼの感とか観てくれているチビっ子がワクワクするようなところに尾崎さんの魅力をリンクさせるイメージで、その後のフルサイズ…特に2番以降はアニメの世界観は応酬しつつ、さらに “等身大の尾崎由香”を出せたらなと思って。満を持してのデビューシングル、ずっと応援してくれているファンの皆さんや仲間への「出逢ってくれてありがとう」という感謝の気持ちを表した"ギフト"ですね。もちろんキラキラ元気な楽曲ではありつつ、ちょっと甘酸っぱくて切なくて、いつでもファンのみなさんに思い出してもらえるような曲にしたかったんです。デビュー曲に関わらせてもらえるのは音楽家としてとても光栄なことですからね。

尾崎:この曲はすごく明るいし、デビューするにあたっての自分の気持ちとすごくリンクするので、私も歌いやすいし、いただいた時に「フレッシュな気持ちを歌にしてみなさんに届けたい!」という気持ちがすごく強くなったんです。レコーディングも楽しくて、〈手をたたいて PAN☆PAN☆〉のところの手拍子とか〈かかと 鳴らせ BAN☆BAN☆〉でかかとを鳴らす音もスタッフのみなさんと録音したんですよ。

後藤:そうそう、おもしろかったですね。すべてのレコーディングを終えたあとに、アディショナルとしてみんなで録音しようよ!ってね。ディレクターさんとかエンジニアさん、マネージャーさん、みんなでゾロゾロとブースに入ってノリノリで手拍子&足踏み(笑)。僕は尾崎さんの隣だったんですけど、身長差があったのでマイクが(尾崎の)上のほうにあって(笑)。

尾崎:けっこう背伸びして叩きました(笑)。でも、そんな経験は初めてだったので、「曲ってこうやってみんなで作るんだ」と思いましたし、ソロでは初めてのレコーディングでしたけど、すごく良い思い出になりました。

――歌の雰囲気で言うと、今回の3曲の中でも可愛らしさはもちろん、ピュアな幼さみたいなところがいちばん出てる曲だと思ったのですが。

後藤:歌の世界観は尾崎さんから醸し出されるムードに尽きます。やっぱり『少年アシベ GO! GO! ゴマちゃん』の曲としてオンエアされるところもあったから、逆に年齢なんかも飛び越えて、チビっ子が聴いても大人が聴いても「明日もがんばろう!」みたいな気持ちになればイイなと。それを何よりチャーミングに歌ってくれたのは尾崎さんの表現によるところだと思うし、そういう意味では何度聴いてもハッピーになれる気持ち良い曲になってうれしいですね。最高!

尾崎:やっぱり『少年アシベ GO! GO! ゴマちゃん』のオープニングテーマになるということで、子どもたちに楽しく聴いてほしいですし、アニメの世界観に入り込めるような曲になればという気持ちを込めてレコーディングに挑んだので、そういう感じになったんだと思います。

――あと、後藤さんは乃木坂46「ガールズルール」やSTARMARIE「ナツニナレ!」などを手がけられてて、個人的には夏ソングが得意なイメージを持ってるんですが、「LET'S GO JUMP☆」も夏っぽい印象がありますよね。

後藤:期せずしてリリースが8月ですが、そこは尾崎さんとも相談しながら、あまり季節感のあるワードは盛り込まないようにして、春でも夏でも…いつ聴いても元気になれる曲にしたいねって。夏っぽいということは、つまり"開放感がある"ということだと思うし、見事に尾崎さんが世界観を作ってくれたところなのかなと思っています。

――なるほど。MVが沖縄撮影だったので、そのイメージに引っ張られたのかもしれません。

尾崎:あのMVはまさに夏っていう感じですものね(笑)。

尾崎由香 -「LET'S GO JUMP☆」ミュージックビデオ

――続いて初回限定盤のカップリング曲「僕のタイムマシン」ですが、作詞を清浦さんと沖井さんのお二人、作曲と編曲を沖井さんが手がけられてます。こちらはどういったオファーで書かれた曲なのですか?

沖井:僕は昔にCymbalsというバンドをやっていまして、これまでもお仕事で「Cymbalsのあの曲みたいな感じで」というオファーをいただくことが多かったんですけど、今回は具体的にどの曲ということではなく「Cymbalsっぽいもの」というお話をいただいたんです(笑)。ただ、Cymbalsは解散して15年近く経ってるので、一度聴き直して昔の自分と対面することになって(笑)。

清浦:どんな感じだったんですか?

沖井:もう15年も経つと他人なんですよ。「へー、こんなことを考えて、こんなことやってたんだ。やるね、お前」みたいな感じで(笑)。改めて分析すると今はやらないような手法もあったので、そういうものを掘り起こしていったら、最近TWEEDEESやいろんなところで作ってるものとは違うテンションのものが出てきて、デモが出来たら自分でも「これCymbalsじゃん!」って興奮したりして(笑)。

尾崎:ファンの方にもリリースイベントとかで披露すると「Cymbalsっぽくてすごく好きです!」ってよく言われるんですよ。

沖井:がんばりましたから(笑)。

清浦:研究しまくってましたからね。

沖井:そんなことをやってると、曲を作った当時の辛かったこととか悲しかったことも思い出して(笑)。でも、そういう気持ちだったからこういうフレーズにしたんだなということにも気付いて、それを今回の曲に盛り込んだりもしたんです。それは、こうやって引っ剥がす作業をしなきゃ思いつかなかったことだし、僕としてはデトックスじゃないけど、自分が今までに作ってきたものを整理できたところがあって、今作ってるTWEEDEESの新作にも影響が出てると思うんですよ。(尾崎に向けて)ありがとうございます。

尾崎:光栄です(笑)。

沖井:なおかつ、土岐麻子ではなくて尾崎さんが歌うものなので、ちゃんと組み替えなくてはいけない部分もあって。そこは先ほどの声の成分の話もそうだし、本人の持っているキャラクターや雰囲気も盛り込まなくてはならないし。あと、Cymbalsは2000年前後の話だったけど、今はもう2018年なので、そのままコピーするのではなくてアップデートしないとおもしろいものにはならないと思って工夫しましたね。実は「僕のタイムマシン」ほどアップテンポの曲はCymbalsにはないんですよ。今聴き直すと意外とダルいですよ。

――いやいや(笑)。

沖井:だからテンポもそうだし、リズムの組み方も意識して、音色とかキックの位置とかも考えました。あとは先ほど“キュートでラブリー”というお話がありましたけど、たぶんそういう楽曲は僕以外の人が作られると思ったので、「僕のタイムマシン」ではそれ以外のところを担当してもらおうと思って。例えばサーバルちゃんとかのイメージではなくて、もう少し切なくしたり、尾崎さんの今の実年齢を考えたら、もうちょっとだけ大人にしようと思ったんです。尾崎さんは今26歳でしたっけ?

尾崎:25歳です。

沖井:……すみませんでした!

尾崎:いえいえ、あまり年上に見られることがないのでちょっとうれしいです(笑)。

沖井:ええ子や(笑)。まあ、25歳というのは人生にも深みが出てくる年齢じゃないですか。そういう部分を曲で表現してあげたいという気持ちがメロディに入っていますね。

――歌詞は清浦さんがメインで書かれたのですか?

清浦:そうですね。沖井さんがCymbalsを思い出す作業をずっとしてたので、私が「タイムマシンがあったらいいのにねえ」という話をポロッとしたんですけど、その時に「これをテーマにしたらいいんだ!」と思いまして。もちろんCymbalsのための曲を作っているわけではないので、そこから尾崎さんに寄せた歌詞を書いていきました。

沖井:でも曲のタイトルは僕が決めたんですよ。これは本当に個人的な話なんですけど、僕が音楽を始めるにあたって非常に影響を受けたザ・コレクターズというバンドに「僕の時間機械(タイムマシーン)」という曲があるんですね。今回は僕の初期衝動じゃないですけど、Cymbalsとかそういうものを思い出しながら作った曲でもあったので。僕ももうすぐ50歳になりますが、今回はいい感じに20代に戻らせていただいて。この曲が“僕のタイムマシン”なのかもしれない(笑)。

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