“男性声優×ラップバトル”ヒプノシスマイクの音楽的魅力ーーシリーズ最新作から考察

 たとえば、本作に収録されたシブヤディビジョン(=Fling Posse)の楽曲「Shibuya Marble Texture -PCCS-」は、ファッショナブルで賑やかなストリートとしてのシブヤのイメージを、色彩豊かでメロディアスなビートミュージックに落とし込んでいる。編曲を担当したAvec Avecの洒脱な作風が存分に発揮された佳曲だ。

ヒプノシスマイク Fling Posse「Shibuya Marble Texture -PCCS-」

 ほか、注目のプロデューサーや参加ラッパーについては、こちらの記事(月蝕會議、Avec Avec、サイプレス上野……『ヒプノシスマイク』支えるクリエイター陣に注目)でも知ることができるので参照してほしい。

 また、声優陣によるラップが、いわゆるラップ的な上手さとは異なる巧みさを見せていることも、ヒプノシスマイクの見逃せない魅力のひとつだ。

 ビッグネームや実力派を作詞・作編曲に招いていることも、このプロジェクトの人気を後押ししてきた。一方で、曲ごとに異なるラッパーが詞を提供していたり、あるいは複数のキャラクターによるマイクリレーをひとりのラッパーが担当していたりと、ラッパーの個性のキモである“フロウ(譜割り、節回し)”がキャラクターごとに安定しない傾向がある。

 そこを見事にカバーし、作品世界に説得力を与えているのが、提供された詞を吸収したうえで、キャラクターの性格や感情の起伏を感じさせる演技を交えた高度なラップを披露する声優陣の力量だ。特にKEN THE 390が作詞を担当した、本作収録のバトル曲、「BATTLE BATTLE BATTLE」は、声優ならではのスキルを堪能するにはもってこいの一曲。

ヒプノシスマイク「Fling Posse VS 麻天狼」より「BATTLE BATTLE BATTLE」/Fling Posse VS 麻天狼

 これまでの6枚のリリース作には、各キャラクターのソロ曲からバトル曲、ディビジョンごとのテーマ曲が収められているほか、長尺のドラマパートも収められている。楽曲を聴いてピンときた人は、ぜひドラマパートもじっくりと聴いて、作品世界に浸ってみてほしい。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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