SNSで“トレンド”を生み出す秘訣とは? あさぎーにょ、KID CROW、ドアノブロックが語る

『Feat.』ファイナリスト インタビュー(前編)

KID CROW「クオリティよりも発想の面白さが重要」

 2017年に日本に帰化してアーティスト活動を始めたラッパー・KID CROW。3年前に日本語ラップと出会いHIPHOPに傾倒し、その後はAbemaTV『ラップスタア誕生!』に出演、路上でのフリースタイルバトル(サイファー)を行うなど、日本のHIPHOP文化を海外に広げることを目標に日々活動している。今回のオーディションでは、テクノロジーとHIPHOPを融合したコンテンツなどでグランプリを狙う。

KID CROW

ーーKID CROWという名前の由来は?

KID CROW:幼稚園児のころって将来なりたいものを聞かれるじゃないですか? みんなは消防士やキャビンアテンダントとか言っていたと思うんですけど、僕はカラスだったんです。子どものころ、カラスになりたかった。それでKID(子ども) CROW(カラス)です。

ーー日本に帰化されていますが、そこに至る経緯を教えてもらえますか?

KID CROW:母親が日本人で、父親がアメリカ人とフランス人のハーフなんですよ。だから幼少期から日本、アメリカ、カナダの3カ国を転々としていました。幼稚園から小学校は日本で、たまにカナダ、高校から大学はアメリカで暮らすことが多かったですね。でも、日本でやりたいことがあったから日本で暮らそうと決めて。音楽活動もそのひとつです。

ーーラッパーとして『ラップスタア誕生!』にも出演するなど、ずっとヒップホップが主なスタイルなんですか?

KID CROW:子どものころはピアノ、バイオリン、ギターを弾いていました。親が音楽好きなので、教育の一環でしたね。高校時代はヘビーメタルとアコースティックギターが大好きになって、バンド活動もしていました。でも、ある時からヒップホップを聴き始めて、そこからずっと今のスタイルで音楽活動を続けています。

ーーヒップホップに惹かれた理由はなんですか?

KID CROW:ヒップホップは単純に音楽だけでなく、ポエトリーリーディングの側面もあるのが面白いです。もともと言葉遊びが好きだったし、ルーペ・フィアスコの作品に衝撃を受けて。フィアスコは言葉の裏に意味を隠していて、さらにその意味の裏にもメッセージを隠すんですよ。まるでシャーロック・ホームズの小説を見ているような感覚を受けて、それまでヒップホップに抱いていた印象がガラっと変わりました。何回聞いても解読できないし、本当に奥深いものだなって。

烏 - ¥EN

ーーヒップホップにも種類があると思いますが、KID CROWさんが目指すスタイルはなんですか?

KID CROW:入り口はルーペ・フィアスコでしたが、今はLil Uzi VertやYoung Thugみたいな実験的なヒップホップに興味を持っていて、今後作っていく作品でもリリックに頼らずに、純粋に音として楽しめるようなヒップホップがやりたいんです。少しラップの概念から距離を置くというか、言葉を音としてトラックに乗せた時にどんな音楽となるのかーー言語も関係ないので国境を越えるものができる気配がするんです。今のヒップホップを聴いていても、英語なのに耳に入ってこない作品もよくありますよね。アンビエント音楽として聞こえますが、言いたいことはニュアンスで理解できるような作りになっている。今はそういう言葉に縛られないスタイルを目指して楽曲を作っています。

ーー今回のオーディションで作りたい音楽も考えていますか?

KID CROW:海外に向けたものを作りたいと考えています。日本らしいドメスティックな部分を盛り込んで、日本のヒップホップ文化を海外の人にもわかりやすく伝えられるコンテンツ。例えば日本のラッパーを集めて世界にアピールする動画とか、AIが作詞作曲したものを日本のトラックメイカーとアレンジしてMVを作るとか。もしくは、言語ではないなにかでヒップホップを作るのも面白いかなって。

ーーSNSで拡散する上での作戦はありますか?

KID CROW:僕はSNSの活用が少し苦手なので、そこは企画力で勝負したいです。でも、アメリカのHarmon brothersという会社はバズを生みだすのがすごい上手くて。そこではYouTubeで面白い広告動画を作るのですが、アメリカにはない“起承転結”を動画にうまく活用したり、偉人の言葉を引用したりと、フックになる要素を動画にうまく組み込んでいたんですよね。ずっとその会社を研究して論文も書いていたので、その時の知恵が役に立つかもしれませんね。きっと音楽もクオリティの高さより、発想が面白いものがバズるような気がします。ワックスというラッパーが「Low Budget」という曲を作った時は、フライパンなどの身の回りにあるものでトラックを作っていて、すごく驚きました。そういう視聴者に驚きを与えられるものを作っていけたらと思います。

ーー他のファイナリストで気になる人はいますか?

KID CROW:まずはあさぎーにょですね。彼女は独創的で面白いです。あと、セックスラペチーノは存在が上手いなと思います。あとは、葉山柚子さん。彼女は17 Live(イチナナ)というホームグラウンドを持っているので、火がついた時の爆発力があると思います。都道府県を巡るという企画もファンと直接コミュニケーションを取れるので、ファンがつけば止められないと思います。

ーーしっかりリサーチしてるんですね。

KID CROW:やっぱりトレンドを作るためには話題性だけではダメだと思うんですね。話題と紐づく、人を動かすなにかがないと一瞬で終わってしまう。人の考え方に影響を与えて、なおかつ波及させていくコンテンツを考えなければならないな、と。

ーーグランプリを取った後、アーティストとしてのビジョンはありますか?

KID CROW:アーティストとしてやりたいことはオーディション期間に全部やるつもりです。でも、<88rising>のアーティストとはコラボしてみたいですね。今回のオーディションの企画でも声をかけてみるつもりですが、難しいかもしれないので(笑)。でも、グランプリを獲得して、アーティストとして箔がつくことで実現できればと思います。

■KID CROW 関連リンク
YouTube チャンネル
Twitter(@AkaiKaras)
Instagram

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる