WEAVERは新しい物語を紡いでいく 新プロジェクト『流星コーリング』スタートのライブを見て

WEAVERは新しい物語を紡いでいく

 そして新曲のお披露目へ。ピアノのインストトラックをバックに、声優・花澤香菜が『流星コーリング』のイントロダクションにあたるパートを朗読。その後、新曲「最後の夜と流星」が演奏されたのだっだ。小説は、人工流星が初めて降った夜を境に、主人公・りょうはなぜかその日をループしてしまうというストーリー。『夢工場ラムレス』(河邉の小説家デビュー作)と通ずるSFの世界観と、これまでWEAVERの楽曲で多く描いてきたピュアな恋愛模様とを掛け合わせたような感じだ。楽曲の方は、全体的にピアノロック方面に舵を切っているものの、シンセサイザーの音色を大胆に導入。それによって物語の“はじまり”を彷彿とさせる疾走感あるサウンドを実現させたほか、ボーカルのメロディ構成などもそれを後押しするようなものになっている。歌詞は小説とリンクするような内容だ。ちなみにこの朗読~新曲の流れ、本番では映像トラブルがあったのだが、配信終了後に3人が再登場しリベンジを実施。そんな場面からもこのプロジェクトに懸けるWEAVERの強い想いを読み取ることができた。

 アウトプットこそ違っているものの、昨年のツアーで言っていた「みんなが幸せになれる曲を作りたい」「そうしてもっと一緒に音楽を作っていきたい」という言葉は、この日河邉が言っていた「誰も独りにしないような作品を」という言葉とほぼ同義である。また、この日演奏された9曲以外にも、WEAVERの楽曲には歌詞に“星”が頻繁に登場する。それらを改めて読んでみると、“星”は、はてしない“自由”の象徴(この場合、「新世界」にあるように対比として“飛べない僕”が登場する)、あるいはその輝きを今しかないものだとしたうえで“希望”“奇跡”の象徴として使用されており、いずれにせよ“孤独”に寄り添ってくれる存在として描かれている。そう考えると「誰も独りにしないような作品」のモチーフとして“星”を用いたことは、このバンドにとってかなり自然なことである。

 こうして始まった『流星コーリング』プロジェクト、はたしてどのような物語を紡いでいくのだろうか。新曲「最後の夜と流星」は現在配信中。8月17日からはhontoにて小説の配信がスタートするほか、それに伴い、新曲も解禁されていくという。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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