TWICE、MOMOLANDらK-POPガールズグループ日本進出の背景 “物語性”と“著作権”から考察

 第二の強さは、ネットでのコンテンツ消費が強いということだ。この点については、韓国の音楽産業がおそらく意図的に採用している「緩い著作権」が効果を発揮していることは、筆者は機会があるたびに指摘してきた。ファンたちが中心になって、K-POPアイドルたちのテレビ出演などの動画をSNSにどんどんアップしていく。独自の編集や解説動画、またファンのダンス動画も豊富に存在する。公式のMVの視聴数が大きくなるようにファン同士が暗黙に協調していることも確認することができる。本当に熱いファンダムを形成している。

 しかもYouTubeなどのSNSを利用することで、そのすそ野はまさに全世界に広がっている。歌詞などの多国語翻訳も質の高いものが時をおかずにファンの手でアップされている。また世界の流行のトップに韓国のアイドルグループがいることは、日本の同世代の女性たちのあこがれをさらに強化していくだろう。まさに勝ち馬にのるような「バンドワゴン効果」が実現している。これは他の大多数の消費が、個々人の消費の在り方に大きく影響を及ぼしていることを意味している。このバンドワゴン効果の根源が、「緩い著作権」にあることは自明である。

 ただしここで韓国の女性アイドルグループ(だけでなく男性アイドルグループも同様だが)には、日本市場で独特の壁が存在してしまう。日本の代表的な音楽番組に彼女たちがでても、そのファン独自の動画アップは、日本の厳しい著作権の運用の前であえなく削除などの処分にあってしまうことが多い。K-POPの世界的な成功が、「緩い著作権」という民間ベースの主導でなされたことに対して、日本の音楽関係者の理解はまだ十分ではないように思われる。別な観点でいえば、日本でも「緩い著作権」が採用されれば、さらに韓国の女子アイドルグループが市場を拡大する可能性がでてくるといえるだろう。

■田中秀臣
1961年生まれ。現在、上武大学ビジネス情報学部教授。専門は経済思想史、日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的論客として、各メディアで発言を続けている。サブカルチャー、アイドルにも造詣が深い。著作に、『AKB48の経済学』、『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』『デフレ不況』(いずれも朝日新聞出版社)、『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)など多数。『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞。好きなアイドルは、櫻井優衣、WHY@DOLL、あヴぁんだんど、鈴木花純、26時のマスカレイド、TWICE、NGT48ら。Twitterアイドル・時事専用ブログ

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