ゴスペラーズ、新たな一面を見せる「In This Room」 ジェイキューとの深い信頼関係を紐解く

ゴスペラーズ、ジェイキューとの新曲を解く

 デビュー24年目を迎え、更なる進化を続けるボーカルグループ、ゴスペラーズが真夏の暑い夜をさらに熱くするニューシングル『In This Room』を7月4日に発表した。

 ゴスペラーズの代表曲「永遠(とわ)に」をプロデュースしたブライアン・マイケル・コックスとパトリック“ジェイキュー”スミスとの16年振りのコラボレーションとして話題を集めた「ヒカリ」に続き、ジェイキューとゴスペラーズが再びタッグを組んで完成させた「In This Room」。これまでになく官能的な大人の愛を描き、ゴスペラーズの新たな一面を垣間見せてくれる。いや、かなり驚く人も多いかもしれない。

 ゴスペラーズとのスタジオワークのため来日したジェイキューは、その時のインタビューで、「たくさんのボーカルグループと一緒に仕事をしてきたけど、ゴスペラーズが凄いと思うのは、メンバー全員が全く違う個性を持ちながらも、うまく<組み合わせ>られているってこと。例えば、クッキーとホットソースは両方美味しいけど、一緒に食べるのはちょっとなぁ、って思うだろ? 彼らの場合は、ポテト、牛肉、セロリのように全く異なってるのに、一緒に歌うとみんながおかわりしたくなるような美味しいビーフシチューみたいな音になるってこと。その美味しいシチューに俺は隠し味を加えることだけしかしてないんだよ。その上でいつも大切にしているのは、5人の<魂>を聴き取ること。日本語がわからなくてもそれを感じることで曲の方向性が見えてくる。最近ではキャッチーさだけを求めるシンガーも多いけど、ゴスペラーズの5人は曲を通じて<伝えるべきこと>を俺に感じさせてくれる。それを俺は音にするだけなんだ」とゴスペラーズについて語り、作詩を担当した安岡 優は「ジェイキューの持つビートやメロディに合わせた彼が書いた英語の韻を、日本語にすることによって失わないようにすることにいつも気をつけている」と話した。2人のこの発言を聞くだけでも、彼らが互いを尊重し合い、深い信頼関係で結ばれていることがわかるのではないかと思う。ありふれた表現ではあるが、人は言葉の壁を越えて分かり合える、そして音楽はユニバーサルランゲージであるということが具現化されたコラボレーションだ。

 今ではアリアナ・グランデ、ビヨンセ、アッシャー、ジェニファー・ロペス、クリス・ブラウン等に楽曲を提供し、世界的に大ヒットを飛ばし続けるソングライターとなったジェイキュー。18年前ゴスペラーズと創り上げた「永遠(とわ)に」が彼にとってプロとして初めてクレジットされた作品となったことはあまり知られていない。ゴスペラーズが彼のような逸材とブライアン・マイケル・コックスからの紹介で出会い、無名であろうとその才能を信じ、自分達のボーカルを委ねて完成させた曲が彼らの代表曲となったということも。ゴスペラーズもジェイキューも、ヒット曲を最初から作ろうとしているのではなく、これは“感じる”と自分達が直感で確信した楽曲を、自分達が語りたいと思うストーリーと共に伝えようとしているだけ。自分の心に正直なままを音にすることの大切さも素晴らしさもわかっている。だからこそ両者共、成長しながらも自分達らしくヒット曲を常に世に送り続けることができるのだろう。この「In This Room」も彼らがこの夏に感じる愛の形。この“激しい熱さ”に共感する人も多いだろうと思う。(恥ずかしがらずに、素直に!)

 c/w曲には映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(2018年11月全国公開)の主題歌として安岡 優が書き下ろした「Seven Seas Journey」が収録されている。7つの海を越える究極の愛の歌は、鳥肌立たずには聴けないほど心に響く、ゴスペラーズの真骨頂ともいえるバラード。

 新たな一面を見せてくれたゴスペラーズがここからどこへ向かっていくのか。現在制作中というニューアルバムでは、どんな隠し味の利いたビーフシチューが味わえるのか。銀のスプーンを持ってワクワクしながら待ち構えるとしよう。

ゴスペラーズ 『In This Room』Full Ver.

(文=Kana Muramatsu)

■リリース情報
『In This Room』
発売:2018年7月4日(水)
【初回生産限定盤(CD+DVD)】 ¥1,400(税抜)
DISC 1
1. In This Room
2. Seven Seas Journey
DISC 2
私がゴスペラーズじゃなかったら ~安岡 優編~
【通常盤(CD)】 ¥1,000(税抜)
DISC 1
1. In This Room
2. Seven Seas Journey

オフィシャルサイト

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