ゲスの極み乙女。が6年かけて拡張してきた独自の音楽世界 演出的にも進化したNHKホール公演レポ

ゲスの極み乙女。が拡張してきた音楽世界

 中盤の「煙る」や「ルミリー」「某東京」では、スモークや映像を使った演出で川谷がステージから姿を消すなど、新たな視覚的試みも行われた。また、川谷がラジオで共演し、「背丈が全く一緒」だという芸人・新作ハーモニカの藤田隼人が川谷になりすまして会場後方から登場するなど、ゲスの極み乙女。らしい遊びも各所に見られた。

 藤田の高レベルのボイスパーカッションを交えて「ドレスを脱げ」を披露し、ライブはいよいよ終盤へ。「猟奇的なキスを私にして」「キラーボール」など、ライブでは定番の曲ではあるが、その独創的な曲展開はいつ聞いても新鮮な驚きがある。

 そしてこの日のハイライトは、アンコールにあったと言っても良いだろう。たった2曲といえど、かなりの濃密さがあった。まず披露されたのは、新曲「オンナは変わる」。「過去最高難易度」だという楽曲で、アップテンポで各楽器の音が複雑に絡み合うスリリングさがくせになる楽曲だ。ダンサーも再登場し、男女の移りゆく関係が視覚的にも表現されていた。その後、川谷はMCで、昨年5月の活動再開ライブで多くのオーディエンスが迎えてくれたことに救われたと伝え、また、自身の楽曲制作に影響を及ぼした存在として、「聴いてきた音楽がこんなに同じ人とは会ったことがなかった」と、米津玄師との出会いを語った。そして、「ずっとこの曲が僕の中にある」と前置きして演奏したラストナンバーは「だけど僕は」。自身の孤独さを見つめる歌詞に反して、サウンドはどこか開けた場所に向かって飛び出していくような軽やかさで、ライブを締めくくった。

 この日のライブでは川谷主宰のレーベル<TACO RECORDS>が発足すること、また9月からゲスの極み乙女。の全国ツアーをスタートすることも発表された。8月にはアルバム『好きなら問わない』も発売。川谷絵音の脳内にあるアイデアがどんどん形になっている今、活動の範囲はさらなる広がりを見せている。

(取材・文=若田悠希)

■セットリスト
6月22日(金)東京・NHKホール
『ゲスの極み乙女。6th Anniversary live「乙女は変わる」』

1. ラスカ
2. 戦ってしまうよ
3. 私以外私じゃないの
4. 無垢な季節
5. crying march
6. ロマンスがありあまる
7. いけないダンス
8. もう切ないとは言わせない
9. オトナチック
10. 心地艶やかに
11. 煙る
12. ルミリー
13. サイデンティティ
14. 某東京
15. ドレスを脱げ
16. 猟奇的なキスを私にして
17. 両成敗でいいじゃない
18. キラーボール
<アンコール>
19. オンナは変わる
20. だけど僕は

ゲスの極み乙女。オフィシャルサイト

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