歌い手 Eveが「ドラマツルギー」で描いた“闇” 自らを解放して覚醒の期へ

ナンセンス文学 - Eve MV

 「ドラマツルギー」より前の2017年5月に公開された「ナンセンス文学」(『文化』収録曲)という楽曲でもEveは“闇”を描いており、「ナンセンス文学」が彼のターニングポイントの一つでもあった。ナンセンス文学とは、意味のあるものと意味のないものを組み合わせて言葉を使う手法により、文学の倫理やルールを破壊していくような文学のことをいうが、闇を抱えている主人公を新しい自分へと解放させようとしている点が、「ドラマツルギー」と共通している。

 これは〈全て失ったって 誰になんと言われたって “己の感情と向き合ってるのかい” そうやって僕を取り戻すのだろう〉というフレーズがある「会心劇」(『文化』収録曲)にも通じる。先に挙げた「ドラマツルギー」「ナンセンス文学」含め、アルバム『文化』を通じて、腹を割って毒を吐くような内容の楽曲を初めて公開したことは、彼にとって大きな挑戦だっただろう。しかし、思い切った結果、リスナーから彼に対する好感度はより一層高まり、彼はまさしく“会心劇”といえる展開を迎えることができたのだ。「ドラマツルギー」の主人公のように、自分を解放したことで、さらなる幸運を掴んだといえる。

 「ナンセンス文学」と「ドラマツルギー」、どちらも文学的な要素が詰め込まれており、何かを訴えるために生まれた楽曲であることに違いはない。彼はTwitterで「ナンセンス文学を投稿してから今日で1年。この1年間で僕の中の何かがグシャッと変わってしまった感覚がすごくある、人生で1番濃い1年だった気がする」と投稿していた。『文化』を機に覚醒し、よりリリカルになった彼は一味違う。今後はどんな形で、どんなトリックを仕掛けた楽曲を生み出すのだろう。変幻自在な彼の名が、広く一般のリスナーに知られていくのもそう遠くなさそうだ。

■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライ
ター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real
Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
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