けやき坂46は“アイドルらしくない”の対極を進む 多様化し、外部とつながるシーンの現在地

アイドルとフェス、そして「当たり前のもの」になるアイドル

 ここまで名前を挙げてきた欅坂46、Negicco、BiSH、Masion book girl、sora tob sakanaは今年5月にさいたまスーパーアリーナで開催されたアイドルフェス・ビバラポップ!にも出演していた。プレゼンターを務めたピエール中野と大森靖子の顔がはっきりと見える趣味性の高いアイドルフェスのあり方は、TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)、@JAMなどとはまた違ったフェスの可能性を提示してくれた。

 ここ数年のロックシーンでは「フェス」というものが一つのキーワードになっていた。そしてその状況はアイドルシーンにおいても同様である。

 特に大きな話題を呼んだのが2013年のROCK IN JAPAN FESTIVALへの女性アイドルの大量出演で、ロックフェスとアイドルの関係性についてさまざまな議論が巻き起こった。

 この企画は必ずしもうまくいったとは言い難く、翌年の2014年を最後にあっさり幕引きとなっている。一方で、2013年に数あるアイドルの1組としてROCK IN JAPAN FESTIVAに参加していたBABYMETALがその後、FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVALも含めた4大フェス全てに出演することになるなど、アイドルグループが特に注釈なくロックフェスにブッキングされるケースが増えていった。

 今年のひたちなかでは、そんな流れがさらに進行している。48/46グループ、ハロー!プロジェクト、スターダスト、WACKの主要どころがずらりと並ぶタイムテーブルは、かつてのように「アイドル枠」とでも言うべき言い訳をつけなくてもアイドルグループがナチュラルにロックフェスに出演する時代になったということを明確に伝えている。

 かつては「メインの音楽シーンの外で盛り上がっているもの」として認識されていたふしもあったアイドルシーンは、今では音楽シーンの内側にはっきりとしたポジションを獲得するに至った。「アイドルだからどうこう」という話ではなく、「いい曲を歌っているのがたまたまアイドルだった」「フェスで人気のあるアクトがたまたまアイドルだった」という時代にいよいよ突入しつつある。音楽シーンにおける「当たり前のもの」として定着したアイドルというフォーマットから、この先どんなユニークな表現が生まれるのか非常に楽しみである。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題になり、2013年春から外部媒体への寄稿を開始。2017年12月に初の単著『夏フェス革命 -音楽が変わる、社会が変わる-』を上梓。

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