『AKB48 世界選抜総選挙』は“再考”の機を迎えた? 『PRODUCE48』との比較から見えたもの

 そのうえで、香月氏は現在の48グループについて、下記のように論じた。

「『選抜総選挙』や『じゃんけん大会』など、本来ならばごく内輪の論理であるはずのものを大掛かりに興行化し、社会を巻き込んで大きなメディアイベントにしてしまう、というのが48グループの一つの手法ですが、その方向性が続いた結果、疲弊を生んで行き詰まっているのかもしれません。『世間は48グループに興味がない』と言及するメンバーもいましたし、48グループのメンバーたちが現在勢いのあるグループとして坂道シリーズの名を挙げることも近年は増えています。普段、シングル選抜発表など“選別される”ことに対してむしろためらいをみせる乃木坂46など坂道シリーズが今日支持されているとすれば、それは世間の気分にフィットするものが変化してきたということかもしれません。だとすれば、順位付け自体を興行化する現在のあり方を見直すにはよい時期なのではとも思います」

 そして、今の苦しい状況を打破するには、“目指すベクトルの再考”が必要だという。

「目指すベクトル自体の再考が必要な時期だとすれば、そのきっかけのひとつになりうるのが『PRODUCE48』だといえるでしょう。選別過程をコンテンツ化するという点では共通する性格はあるものの、既存の48グループとは異なる文化圏の価値観にある程度ゆだねることになるため、48グループ内あるいは日本国内での論理が相対化され、メンバーや運営、ファンにとって次に向かうべきところ、持つべき視座を再編成するきっかけになるかもしれません」

 『PRODUCE48』は、AKB48グループと韓国の人気オーディション番組『PRODUCE101』がタッグを組んだグローバルガールズグループ誕生プロジェクト。放送はまだスタートしたばかりだが、早速様々な意見がグループに向けられているという。

「48グループのファンにとどまらず他のカテゴリのファンから寄せられるさまざまな指摘は、摩擦も生みつつ複数の視野が投じられ興味深いです。番組上でも、以前からYouTubeなどでアウトプットを続け、自身でトラックメイクなども手がけるAKB48の竹内美宥さんがフックアップされるなど、これまでの48グループの文脈とは異なる観点から個々人のスキルが評価される機会が生まれています。48グループとして海外での展開もますます増え、倫理意識を含め見直しが必然になるタイミングにさしかかっているなかで『PRODUCE48』のような企画があるのは大きいですし、これらの展開が『選抜総選挙』という企画にどういった影響をもたらすのか、注視していきたいですね」

 かねてより表面化されていたポジティブな面だけではなく、問題点も浮き彫りになってきた『選抜総選挙』。新たな取り組みも始まる中で、同イベントは変革を迎える時期にさしかかっているのかもしれない。

(文=中村拓海)

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