宇多田ヒカル、チャットモンチー、NEWS……キャリアの重要地点に辿り着いたアーティストの新作

水曜日のカンパネラ『ガラパゴス』

 水曜日のカンパネラの新作EPのタイトル『ガラパゴス』は、音楽・文化を含めた日本のメタファー。能や歌舞伎に代表される世界に誇るべき独自の芸能を持ちながら、政治、経済をはじめとする分野では取り残されている現在の日本をコムアイ、ケンモチヒデフミ、Dir.Fは、独創的なクリエイティビティとダンスミュージックのトレンドを絶妙に混ぜ合わせながら、まったく新しいポップミュージックへと結実してみせた。アフロポップ、アジアンポップにもつながるエキゾチックなトラック(BPMはかなり遅め)、日本語の美しさに独特のグルーヴを与えるボーカルなど、音楽性自体も一気に深化している。日本人にしか作り得ない、そして、“いま”を捉えているという意味で日本版の「This Is America」と言えるかも。

水曜日のカンパネラ&Moodoïd『マトリョーシカ』

 「日本テレビ系ロシア2018テーマソング」としてオンエア中のNEWS「BLUE」は、シンガロング必至のコーラス、“サムライブルー”をテーマにした勇壮な歌詞、EDMをベースにしたアッパーなトラックがひとつになったアンセムナンバー。〈吠えろニッポン いざ行こう〉という歌詞をまっすぐに響かせられるのは、これまでにもサッカー大会の楽曲を担当してきた彼らのイメージが定着しているからだろう。作詞・作曲を手がけているのは、「チャンカパーナ」「EMMA」など、2012年以降(つまり4人体制になった後)の楽曲を数多く手がけ、いまやNEWSの音楽の中心的な存在になっているヒロイズム。メンバーの声質、歌いグセを知り尽くし、もっとも効果的に配置したボーカルアレンジにもぜひ注目してほしい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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