OPN『Age Of』は“ワイドスクリーン・バロック”的? 『構造素子』の樋口恭介氏が読み解く

OPN新作を小説家・樋口恭介氏が語る

ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Todd Owyoung)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Todd Owyoung)
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ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Drew Gurian)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Todd Owyoung)
ニューヨークで行われた『MYRIAD』の様子(撮影=Todd Owyoung)
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 本作のサウンドを一言で表せば、数多くの断片で作られたモザイク画のようなポップミュージックだろう。全体的にチェンバロの音色が際立つ内容はバロック風味であるものの、「Babylon」は近未来の街中で鳴り響く甘美なデジタル・アシッド・フォークと言えるサウンドで、「Still Stuff That Doesn't Happen」ではジャズのリズムが挟まれたりと、これまで以上に節操なく様々なジャンルを詰め込んでいる。「僕は一つのスタイルを選択することができない」と語る、実にOPNらしい内容だ。こうした作風に対し、最後に樋口氏は次のように語った。

「これまでの人生で聴いた何にも似ていない音になっており、何よりもまず、傑作『Garden Of Delete』のあとに、それを上書きし乗り越えていくような新しい音を作れてしまっていることに対し、驚きを覚えるとともに同じ創作者として背筋が伸びる思いがしました。ポストモダニズムでもなく懐古趣味でもない、素朴に新たな領域を切り開いていく新規性というものはまだ可能であり、創作というのはその可能性に賭け、未来を自ら創っていく行為なのだなと思いました。初めて聴いたときは未来をのぞきこんだような気分になり――そしてそれこそは僕が思う〈SF的な体験〉でもあるのですが――聴きながら、ただただ純粋に興奮しました。

 音については、OPNはこれまでにもポップの脱構築やコラージュによる異化作用というものを強く意識した作品をリリースしてきましたが、『Age Of』はそうした要素がこれまで以上に明確に強調されている作品であるように思いました。ダニエル本人のボーカルによるポップソングが突然中断され、その瞬間にブラックメタルやノイズが挿入されたり、かと思えばクラシカルで美しい管弦楽器の音や80年代風のシンセサウンドが同時に鳴り、それらの美しくも歪なハーモニーを心地良く聴いていると、また何の前触れもなく突如としてカットアウトされる、などといった目まぐるしい展開の連続には、驚嘆と脱帽を禁じ得ません。

 豪華絢爛な本作を評して言われる“バロック”という表現ですが、それに関連し、せっかく僕はSF作家なのでSFに話を接続すると、複雑なアイディアが惜しみなく次々と提示され、飽きる間もない興奮の中で作品が終えられる、という作品体験は、SFのサブジャンルである“ワイドスクリーン・バロック”に近しいものを感じます。“ワイドスクリーン・バロック”の定義は、本作に限らず、OPN作品全般に通じるものがあると思いますので、最後にこの定義を紹介し、インタビューの結びの言葉とさせていただきます。

 時間と空間を手玉に取り、気の狂ったスズメバチのようにブンブン飛びまわる。機知に富み、深遠であると同時に軽薄であること。

――ブライアン・W・オールディス『十億年の宴』」

 アノーニとの議論から始まった内省を経てロパティンは、現実世界とも共振する蠱惑的なラビリンスを築き上げてしまった。

(メイン 写真&アーティスト写真=Atiba Jefferson 2018)

■近藤真弥
1988年生まれのライター/編集。COOKIE SCENE編集部に在籍していましたが、今はフリーで活動中。魅力的な雑音を紡いでいきたいです。ぜひとも。
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ONEOHTRIX POINT NEVER『Age Of』

■リリース情報
『Age Of』
発売:2018年5月25日(金)
価格:国内盤CD ¥2,200+税
国内盤CD+Tシャツ ¥5,500+税
予約はこちらから

〈amazon〉
国内盤CD
国内盤CD+Tシャツ(Sサイズ)
国内盤CD+Tシャツ(Mサイズ)
国内盤CD+Tシャツ(Lサイズ)
国内盤CD+Tシャツ(XLサイズ)

〈TOWER RECORDS〉
国内盤CD
iTunes
Apple Music

〈トラックリスト〉
01 Age Of
02 Babylon
03 Manifold
04 The Station
05 Toys 2
06 Black Snow
07 myriad.industries
08 Warning
09 We'll Take It
10 Same
11 RayCats
12 Still Stuff That Doesn't Happen
13 Last Known Image of a Song
14 Trance 1 (Bonus Track for Japan)

樋口恭介『構造素子』(早川書房)

■書籍情報
『構造素子』(早川書房)
著者:樋口恭介

■ライブ情報
ONEOHTRIX POINT NEVER来日公演
公演日:2018年9月12日(水)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:O-EAST
前売¥6,000(税込/別途1ドリンク代)※未就学児童入場不可
一般発売日 :4月21日(土)
〈チケット取扱い〉
イープラス
チケットぴあ 0570-02-9999
ローソンチケット (Lコード:72937) 0570-084-003
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