チャイルディッシュ・ガンビーノ「This is America」MV監督、ヒロ・ムライの作家性に迫る

 MVでは、チャイルディッシュ・ガンビーノがアフリカンダンスを踊る後方で、暴力、自殺、事故といった事象がひとつの画面の中で同時多発的に発生。そんなショッキングな出来事に関心を示すわけでもなく、陽気に踊るガンビーノの姿が印象的だ。そんなカオス的な状況が描かれているMVには、ヒロ・ムライのドラマにも通じる作家性が現れているという。

「ドラマにおけるヒロ・ムライの作家性は、ホラー、コメディ、シュールの3つの要素が絶妙なバランスで共存していることです。『アトランタ』や『バリー』もバイオレンス描写やダークな要素がありながらもジャンルとしてはコメディ。こういうホラーとコメディを両立する感覚は日本にはあまりないかもしれません。また、作品からはデヴィッド・リンチ、スタンリー・キューブリック、北野武、コーエン兄弟といった映画界のクリエイターの影響が感じられます。『This is America』のMVにも言えることですが、日常に入ってくる狂気、ホラーコメディ的なアプローチなど、“現実と空想の曖昧さ”(ドリームロジック)を描くのが特に上手いですよね。また、彼の中でMVとドラマは密接に繋がっています。例えば、『バリー』では銃によるバイオレンスを描いていたり、『アトランタ』シーズン2では黒人の喜びと死がテーマにある。彼の中の流れの一環として、必然性を持って今回のMVも撮影されたように感じられます」

 5月14日付のビルボートチャートで1位を獲得し、振り付けの解説動画が登場するなど、今もなお広がりを見せる「This is America」。これを機にヒロ・ムライの過去作品に触れてみるのも良いかもしれない。

(取材・文=泉夏音)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる