ポスト・マローン、XXXTentacion、D.A.N.……“メロウネス&メランコリア”感じる洋邦6作

ザ・ウィークエンド『My Dear Melancholy,』

The Weeknd - Call Out My Name (Official Video)
ザ・ウィークエンド『My Dear Melancholy,』

 3月に突如配信されたザ・ウィークエンドの新作ミニアルバムも素晴らしかった。「親愛なる憂鬱」というタイトルが象徴しているように、新作は彼のダークサイドを表出させたような一作。メインテーマになっているのは失恋や喪失。リリックの内容はかなり後悔に満ちたもので、彼のシルキーな声で、切実なメロディに乗せてそれが歌われる。

 スクリレックスが参加した「Wasted Times」、ダフト・パンクのギ=マニュエルがプロデュースした「I Was Never There」など、大物揃いのプロデュース陣が手掛けた楽曲のクオリティもさることながら、彼の原点に立ち返ったようなこの作風がとても刺さった。なかでも「Hurt You」が個人的な好み。

jan and Naomi『Fracture』

jan and naomi-CSKE MUSIC VIDEO
jan and Naomi『Fracture』

 GREAT3のベーシストとしても活躍するjanとnaomiによるデュオの新作。拠点は東京だけれど、その音楽にドメスティックな感覚は一切ない。歌詞が英語であることもあるけれど、抑制した、どこか霧がかかったような詩情がとても心地よい一枚になっている。「狂気的に静かな音楽」というキャッチフレーズも納得だ。これまでアコースティックギターを主体にしたオルタナティブフォークのテイストが強かったが、今作ではエレピの音が優しくメロウに鳴っている。丁寧に、繊細に紡がれたメロディと幽玄なサウンドスケープが形になっている。

 2014年のリリースからインディペンデントな活動を繰り広げてきた彼らだが、『Fracture』はメジャーレーベルからのリリース。シャーデーを想起させるnaomiの中性的な声、janの低く渋みのある声という二人の歌声もいい。とても耽溺性の高い音楽だ。

D.A.N.『Chance / Replica』

D.A.N. - Chance (Official Video)
D.A.N.『Chance』

 4月20日にリリースされたD.A.N.のアナログ12インチ『Chance / Replica』。それぞれの曲は各種ストリーミング配信でも公開されているが、この2曲はD.A.N.というバンドにとってまた新たなステップになった感がある。旗印にしている「ジャパニーズ・ミニマル・メロウ」という音楽性は変わらず、よりふくよかな抑揚と、よりサイケデリックな深みを手にしている。桜木大悟の描く歌詞も、情景の喚起力を増していて、聴いていて別世界に連れて行かれるような感じがある。

 「Chance」はシンセのアルペジオを繰り返しながら、ゆっくりとしたテンポのリズムが徐々に熱量を増しカタルシスに至るような一曲。「Replica」もやはりスローなテンポで、トライバルなパーカッションが印象的。どこか波に揺られているような聴き心地がある。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば」Twitter

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