『シブヤノオト』チーフプロデューサーが語る、局の垣根を越えて『ANN』とコラボする意義

『シブヤノオト』×『ANN』コラボの意義

「音楽自体が廃れてるとは思っていない」

――若手アーティストが出演している一方で、『シブヤノオト』には誰もが知る人気アーティストや今話題のアーティストも名を連ねていますよね。

大塚:やはり出演者のバランスは考えていますね。『シブヤノオト』は、次来るアーティストを紹介するということを一つのコンセプトにしています。そのため、このアーティストを好きな人は、この若手アーティストも気に入ってくれるんじゃないかという思いでブッキングしています。人気アーティスト目当てで見た視聴者が、「あれ? この若手アーティストもいいじゃん」って思えるような組み方といいますか。イメージ的には、YouTubeに出て来る“あなたへのおすすめ”動画のような感じですね。僕たちが若手アーティストを知ってもらうきっかけを作って、視聴者に興味を持ってもらい、そのアーティストを探っていくことで、また新しいアーティストに繋げていくるという連鎖を作りたいです。

――地盤は固めつつ、常に新しさも取り入れているのですね。5月3日深夜に同時生放送される『岡村隆史のオールナイトニッポン』とのコラボSPも斬新なアイデアですよね。局の垣根を越えるだけでなくテレビとラジオがコラボして一つの番組を作るのが、面白いなと感じました。今回どういう経緯でコラボすることになったのでしょうか?

大塚:オールナイトニッポンもシブヤノオトも「若い人たちを中心に多くの人たちに音楽を届けること」をコンセプトにしているので。それと『オールナイトニッポン』が今年放送50周年を迎えたタイミングで、『シブヤノオト』もリニューアルしたので、この機会にタッグを組むことになりました。

――大塚さんが思う、局の垣根を越えて生放送する意義や今回のコラボSPの制作意図を教えてください。

大塚:意義という点では、やはり『シブヤノオト』という番組をより多くの若い方に見ていただくチャンスを作れたことですね。『シブヤノオト』は知らないんだけど『オールナイトニッポン』を知っている方はたくさんいらっしゃると思うので、僕らとしては『オールナイトニッポン』のブランド力にとても期待しています。今回をきっかけに『シブヤノオト』を知っていただけたら嬉しいです。逆に『オールナイトニッポン』は、ラジオをテレビで流すこと自体がメリットなのかなと。普段あまり見られない光景なので。先日『オールナイトニッポン』の岡村(隆史)さんの生放送にお邪魔したのですが、岡村さんの動きがすごく面白かったんですよ。でもラジオだと当然ですけど見れない。だからそういう姿やディレクターとのアイコンタクトの仕方など、ラジオならではの風景をテレビで映し出せたらなと思っています。

――なぜ編集番組ではなくリスクが高い生放送という形をとったのでしょうか?

大塚:パーソナリティーの岡村さん、MCの徳井さん、直美さん、この3人で一番面白いのは何かと考えたときに、やっぱり生放送かなと。生放送だから生まれる緊張感やグルーヴをこの3人だったら、すごく素敵に料理していただけるのではないかなと思いました。『シブヤノオト』は通常土曜日の深夜に放送しているのですが、コラボSPということで、今回は岡村さんの『オールナイトニッポン』の放送時間で生放送することにしました。

――ラジオとコラボという初めての試みで同時生放送をするのは、すごく思い切った挑戦ですよね。

大塚:そうなんですよ。だから内容が全然決まらなくて……(笑)。僕らも『オールナイトニッポン』のみなさんも「やるからにはいいものを作りたい」と思っているからこそ、コラボすることでしかできない面白さは何なのかということをずっと考えていて、アーティストも含めて決定するまでにすごく時間がかかりました。

――最後になりますが、CD全盛期に比べて番組数が減少する中、『シブヤノオト』含め、それぞれ趣向を凝らした番組づくりが行われている印象です。大塚さんは現在の音楽番組のあり方をどう考えていますか?

大塚:視聴率やSNSでの接触数など数字で表される問題と中身という面で、どこも同じ悩みを抱えていると思います。その2つが上手くリンクすれば一番いいのですが、なかなか難しいのが現状です。たとえば、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)は長い年月、同じ場所で生放送をされていて、番組自体にブランド力があります。だからこそ、そこで発信することにすごく大きな意味があって、日本の音楽業界にいい影響を与えていると思うんです。だけど『ミュージックステーション』を模倣してやっている番組って実はないんですよ。おそらくそれは、ほかの番組の制作者が同じことをしても仕方ないと思っていて、それぞれの個性を各番組で作り出しているからだと思います。僕らもまた同じで、『シブヤノオト』を通して音楽業界自体が少しでも盛り上がってくれたらなと。僕はあくまで音楽を楽しむ形態が変わっただけで、音楽自体が廃れてるとは思っていません。音楽が若い子たちに聴かれてないわけではないので、僕たちがそこにどうやって届けるかのを考えていくことが大切なんじゃないかなと。その一つの答えとして『シブヤノオト』はデジタルという要素に着目しています。

(取材・文・写真=戸塚安友奈)

■番組情報
NHK『シブヤノオト』オールナイトニッポン コラボスペシャル
5月4日(金)午前0時58分~2時00分(木曜深夜)

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