アイドルネッサンスの夏休みは、記憶として輝き続けるーー熱狂のラストライブを振り返る

アイルネ、ラストライブを振り返る

 アイドルネッサンスの活動の幕を締めくくるのは「17才」。〈前髪で隠した心を さぁ、開いて/君の事に気付いてる人が きっといるから〉。以前からアイドルネッサンスには、セットリストへの選曲の妙を感じていたが、「前髪」を歌い終えてからの、「17才」の歌詞が会場に響き渡るラストは、これ以上にないアイドルネッサンスからのメッセージだった。さらに言えば、アイドルネッサンスはデビュー以降、毎日YouTubeチャンネルに動画をアップしていた。その数、1733本。それは、解散ライブ後も数日に渡りアップが続いたのだが、ラスト3月1日に上がったのは、解散ライブでは披露することのなかった、THE COLLECTORS「自分メダル」。エンドロールのようにゆっくりと浮き上がるメンバーの名前と、特別に表示されている説明欄の歌詞は、アイドルネッサンススタッフからメンバーに贈られた何色にも変えられない輝き続ける“メダル”であり、もう一つのエンディングであるように思える。

【「自分メダル」2018.1.8ライブ映像】アイドルネッサンス

 1曲目「ミラクルをキミとおこしたいんです」で堪えていた涙は、最後のMCにてメンバーの瞳から零れ落ちた。「おばあちゃんになってもずっと一緒にいたい」とメンバー愛を宮本茉凜が叫び、比嘉は叶えられなかった「沖縄での凱旋ライブ」をメンバー8人だけででも実現させることを誓った。アイドルネッサンスが終わっても、メンバーの関係性はこれからも続いていく。原田は解散発表からラストライブ前日まで34日間、Twitterにて続けていた弾き語り動画がこれからの道の指標であり、野本が終演後の挨拶にて人一倍大きな声で感謝を伝えていた姿は、どんな時でも自分でいる変わらぬ彼女の姿勢を表していた。持ち前の明るさで最後まで盛り上げ役に徹した百岡古宵は「アイドルネッサンスが一番自分らしくいられる場所だった」と語った。南端まいなは毎ライブ恒例の「待ってるにゃあ」やLINEアカウントでの「おやすみなさい」動画、毎週Twitterで続けていた「金曜日のおはよう」動画、毎日ブログなど、誰よりも“継続”する力を持った人物だ。新井は「この“9人”に出会えたことは奇跡だなって思う」と2015年9月にグループを卒業した橋本佳奈を解散ライブに言葉の上で登場させる優しさを見せた。石野は「青春って、作るものじゃなくて、気づかないうちに自然にできていくんだなと思いました」と誠実さを見せ、私たちに微笑みかけた。

宮本茉凜「また熱いアイドルネッサンスの夏がやってきます!」(2016年2月28日 『2nd ワンマンライブ エビスですこぶるネッサンス!!』)

新井乃亜「アイドル、そして応援してくださる全てのみなさんの夢が叶えられる、近づける場所」(2017年8月6日 『TOKYO IDOL FESTIVAL 2017』SMILE GARDEN)

 筆者が彼女たちのライブを観てきた中で、この2人の言葉がずっと頭の片隅にあった。もう二度と戻ってこない夏休みのような、淡く煌めく青春を、夢を、彼女たちに重ねていたのかもしれない。「changes」で指差した先には、アイドルネッサンスよりも、きっと輝く未来が待っている。アイドルネッサンスの夏はもうやってくることはないが、彼女たちを思い出した時、それは煌めきを放って記憶として輝き続けていく。

(撮影=曽我美芽)

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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