打首獄門同好会、日本武道館ワンマンでみせた13年半の軌跡とバンドを囲む大きな輪

打首獄門同好会、日本武道館ワンマンレポ

 ここまでの時点ですでに明らかではあるが、この日の武道館公演には様々なゲストがステージに色を添えた。男鹿ナマハゲ太鼓、漁港の森田以外にも、「歯痛くて」にはDr.COYASSが、「きのこたけのこ戦争」にはバックドロップシンデレラの豊島”ペリー来航”渉(Gt / Vo)、アサヒキャナコ(Ba / Cho)が登場し、アリーナで起こる“きのこ軍 VS たけのこ軍”のウォールオブデスを扇動した。ライブ後半には、アシュラシンドロームの青木亞一人(Vo)がステージへ。開演前「四国地方のフェスへの参加」の補填として行われた四国八十八カ所のお遍路巡りの模様が映し出されていたのだが、ここで青木はリハーサルとは違ったステージ進行に愕然とする。ハーネスを付けられ宙へ飛び立つ準備万端、高所恐怖症の青木に、お遍路にて精神的にも強くなり、高いところを克服したことを信じ、打首は「88」を披露する。高いところへと吊るされ、悟りの境地に達した青木。彼と打首には、もう1曲馴染み深い楽曲がある。それが、青木の地元・北海道で開催の『RISING SUN ROCK FESTIVAL』に出店した際、店のテーマソングとしてフェスで披露した「10獄食堂へようこそ」だ。続く、「1/6の夢旅人2002」のカバーでは『水曜どうでしょう』(HTB)でご存知のマスコットキャラクター「onちゃん」が登場。河本あす香(Dr)が「岩下の新生姜!」と勇ましく叫ぶ中、岩下食品の新生姜キャップやバルーンがステージに所狭しと並んだ「New Gingeration」然り、「デリシャスティック」で歌われる株式会社やおきんの「うまい棒」とのコラボに然り、打首は個人的な偏愛を叫び続ける。けれど、その特異な愛が結果として多くの共感を呼び、大きな輪となって武道館を満員にしたのだ。本編ラスト、多くの紙幣が会場を舞った「カモン諭吉」にて起こった“福澤諭吉コール”で、自然と湧き起こってくる一体感に、改めて打首のもたらすカタルシスの境地へと、少なくとも筆者は達していた。

 “最初から”コールを受け、3人は再びステージへ。「夢って見るじゃないですか」と大澤はあえて武道館のステージで、レム睡眠とノンレム睡眠の周期について話し出す。センチなメロディとデスボイスの緩急が特徴の「布団の中から出たくない」にて感慨に浸った大澤が、「楽しい夢だったな。できることなら、続きを見たいなと。今の気持ちを例えるならそんな気持ちです」と語ると、会場には自然と温かい拍手が起こった。“風呂入って速攻寝る計画”こと「フローネル」では、歌詞の<しあわせって?>の問いに「今、幸せですよ。ありがとう」と大澤が答える。そこにいた皆が大団円を感じ始めたその時、ステージ上手、スクリーン近くにRIZEのKenKen(Ba)が、一瞬姿を現わす。ほんのわずか数秒。その刹那のために、あの足場が用意され、リハーサルを重ねたのかと想像すると恐れ入るが、盟友であり互いに慕い合う関係性だからこその、任せることができる重要な役であり、同時に多くのゲストを迎えた今回の武道館公演が、打首が歩んできた13年半の軌跡を讃えていた。

 武道館公演を機に、打首メンバーは1カ月ライブ予定を入れず、長期休暇という名の春休みに突入している。およそ1年ぶりのまとまった休み。Twitterの様子だと、大澤は宣言通りドラクエをやり込んでいるようだが、そんな休日を経て、打首はまた私たちに驚くような新曲を届けてくれるはずだ。

(写真=HayachiN)

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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