小袋成彬、Superorganism、The fin……2018年のムードを伝える新世代アーティスト6選

LOWPOPLTD.『LAST3SONGS.rar』

LAST3SONGS [Trailer]

 ここで紹介する面々の中では、おそらく最も無名。それでも個人的にかなりハマっているのがLOWPOPLTD.の『LAST3SONGS.rar』という自主制作EP。ロンドンを拠点に活動する日本人のソロユニットで、僕は渋谷のビンテージショップ「BOY」の奥冨直人さんが紹介しているYouTube動画をきっかけに知って一気に気になる存在になった。Bandcampで音源を購入したら「Last Song 3 (faith/void_split.wav)」という曲が特に良かった。

 おそらく宅録で作られているのでサウンドのクオリティはそこまで高くない。しかし歪んだギターの音と歌声からは、かつてART-SCHOOLやsyrup16gが鳴らしたような「吐き気と祈りが背中合わせになった感覚」と通じ合うようなものを感じる。そして、それをXXXTENTACIONと同時代性を持ったビートとラップのセンスで形にしている。

 「Last Song」の歌詞は漫画『ヒミズ』から引用したと思われる。<笑いの時間は終った 無道徳が起き上がって>というフレーズもいい。

SILYUS『Youth911』

 3月7日にリリースされる兵庫県出身のラッパー/プロデューサー、SILYUSのデビューEP『Youth911』。彼もXXXTENTACION以降の潮流を体現するミュージシャンだと思う。ここ1~2年、僕はアメリカのティーンがXXXTENTACIONや昨年惜しくも亡くなったリル・ピープなどに、かつてNirvanaのカート・コバーンやKORNのジョナサン・デイヴィスに見出したような破滅的で抑鬱的なスター性を見出している状況をとても興味深く思っているのだけれど、彼のダークで切羽詰まったトラックと切実なリリックからは、同じ感性を日本語で表現していることが伝わってくる。1曲目の「微光」がとてもいい。

 昨年の『ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2017への挑戦~』にてグランプリに輝き、同年幕張メッセで開催された『ビクターロック祭り2017』に出演した彼。おそらく今のロックフェスの現場では相当なアウェーだろう。けれどその表現は刺さる人には棘のように深く突き刺さると思う。

SILYUS「微光」

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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