欅坂46、BiSH、エビ中……『アイドル楽曲大賞』はメジャーアイドルシーンの何を写したか?

『アイドル楽曲大賞アフタートーク2017』前編

「楽曲に手を抜かないところがしっかり結果を出した」(宗像)

ーー20位のでんぱ組.inc「WWDBEST」についても聞かせてください。

宗像:「WWDBEST」は、2016年12月に出したベストアルバム『WWDBEST ~電波良好!~』のタイトル曲という不思議な立ち位置の曲なんです。何人もの作詞家・作曲家の共作で組み上げられていて、さまざまなでんぱ組のエッセンスが集められている。結果的に、(最上)もがちゃんがメンバーにいる最後の曲になってしまいましたね。でも、1年を通して聴かれていて、20位にちゃんと入ったというのは、曲に寄せる思いが大きかったからでしょうね。

ガリバー:実質、1年間活動をしてないのに、それでも20位に入ってくるのはすごいですよね。

でんぱ組.inc「WWDBEST」MV Full

宗像:12月30日に根本凪さんとぺろりん先生(鹿目凛)が加入したことにより、いろんな賛否両論があったと思うんですけど、それがでんぱ組.incに思い入れがある人が多いことの証拠だなと感じました。そのくらい、みんなの心を繋ぎ止めていたというのはすごいですね。

ガリバー:惜しいところでいうと、まねきケチャは昨年インディーズで「きみわずらい」が1位でしたけど、今回はメジャーに行って最高位が「どうでもいいや」の25位。あとはゆっふぃー(寺嶋由芙)の「知らない誰かに抱かれてもいい」も26位に入っています。ゆっふぃーを長年追いかけている宗像さんとしてはどう受け止めていますか?

宗像:いい曲だけに、もっと外部に届いてほしかったですね。どこのアイドルにも通じる一般論を言うと、上位にいくためには、コアなファンの外側にリーチしないとダメですし、どうしたら自分たちのコミュニティーの外に楽曲が届くのかというのは真剣に考えないといけない。実際に上位のBiSH、私立恵比寿中学、欅坂46は、地上波テレビに出たうえでさらに広い支持層を獲得している。ブクガも、MVをYouTubeにフルで公開しているから、見つけられやすいという要素も考えられます。大事なのは、地上波テレビに出る、東京で強い現場を作って話題になる、MVをYouTubeにフル尺でちゃんと公開するという3つかもしれません。

ピロスエ:ハロプロの場合は、MVはほとんどフルサイズで公開されているんですが、他のアイドルではフル公開は珍しいんですか?

ガリバー:まだまだショートVer.のみでの公開や、期間限定での公開みたいなケースは多いです。リリースされたらフルが消されショートVer.のみになったり、そもそもMVが存在していないことが多いです。これでも増えた方だと思うんですけどね。

ーー2018年のメジャーアイドルシーンに期待することはありますか。

宗像:テレビ朝日のオーディション番組から生まれたラストアイドルは、インディーズシーンの目ぼしい子たちをテレビの向こうに連れていくことによって、ライブアイドルでもテレビに出ればメジャーになるという価値観の転倒を起こしたと考えています。そのほかにも、2位から1位へステップアップしたBiSHは、WACKとSCRAMBLESチームにまだまだ力があることを示してくれました。

 エビ中の「感情電車」も「なないろ」もそうだと思うし、メジャーアイドルで楽曲に手を抜かずやっているところが、軒並みしっかり結果を出した1年にも感じます。音楽的な多様性に関してはインディーズに期待しているので、メジャーにはプロモーション的な面白さと、現場で力を持つことをきちんとやってほしいなというのが強いですね。

ピロスエ:「プロミスザスター」は、自分の投票でも1位にしたんですよ。僕はハロプロ以外のアイドルは、能動的に聴くことはあまりないんですけど、それでもこの曲の評判は耳に入ってきましたし、1位なのも納得がいく。自分の投票した曲と1位が一致したのが、2010年のももいろクローバー「行くぜっ!怪盗少女」、2011年の東京女子流「鼓動の秘密」以来で珍しいんですけど(笑)。今回は誰が聴いてもこうなるんだろうなという順位にわりとなったと思うし、次回以降はどうなるんだろうという興味があります。

ガリバー:2017年は、BiSHの躍進とエビ中の松野さんの逝去が印象に残った一年でした。新しいアイドルとして挙げたいのは、宗像さんも話していたラストアイドルとSTU48ですね。あと、乃木坂46のことについても話すと、2017年はライブの動員もさらに増え、紅白も3年連続出演、「インフルエンサー」で『日本レコード大賞』も受賞して、充実した年だったと思います。でも、メンバーがずっと課題に挙げている「恋するフォーチュンクッキー」のような、みんなが口ずさめる曲があるかと言われたら難しい。2018年は、どこかでそれを示せるかがグループにとって、2017年がピークで終わってしまうか、さらに進んでいけるかの大きな分岐点になると思います。

乃木坂46 『インフルエンサー』

岡島:僕は「BiSHが売れてよかったな」という感想ですね。ベビメタ、でんぱ組がブレイクして以降は、秋元康氏プロデュースのグループしかブレイクしていなかった印象があるので。その次が出てこないとシーンは広がっていかないですし、BiSHがブレイクしたことによって、小さなポストグループが出てきて、音楽的にも広がっていくと思うので、そういった影響がどう反映されるかが、2018年の楽しみです。

宗像:BiSHがそもそも、BiSのスクラップ&ビルドから生まれたグループなんですけどね。

岡島:アパレル展開やゲリラ的プロモーションだったり、従来あるものや使い古されたものですけど、またそれを勉強していくグループが出てくると思いますし、伝搬していく動きができるといいですね。

【後編へ続く】

(取材・文=渡辺彰浩)

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第6回アイドル楽曲大賞2017

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