RADWIMPSが『「君の名は。」オーケストラコンサート』で示した映画音楽の新しい形

「君の名は。」コンサートレポート

 今回使用されているすべての音楽は、RADWIMPSが映画のために書き下ろしたもの。そのため、ボーカル有りの挿入歌も劇伴奏としての側面を持ちわせている。個人的に印象深く感じたのは、三葉が彗星の落下から市民を守ろうと奔走するシーンで流れる「スパークル」だ。映画バージョンは、オリジナルバージョンと比べて歌詞が短く、その分間奏部分が長めに取られている。瀧と三葉が再会して別れるシーンから曲がはじまり、彗星が落下するまでの約10分ほどの映像で流れるのだが、ボーカルの入るタイミングや間奏の尺、シーンにあわせて抑揚のある曲の展開といい、映像内の情景と音楽が非常にマッチしている。瀧と三葉の関係性を象徴するような恋の歌でありながら、彗星が目前まで迫ってくる緊張感まで表現している同曲はもちろん、全体の楽曲を通じて新海誠とRADWIMPSの親和性の高さを改めて感じることができた。

 ボーカル曲を前面に出す『君の名は。』の演出は、公開時に賛否両論があったものの、映画における音楽の新しい形を示したと言える。同様の企画が成立する作品はなかなか生まれてこないとは思うが、今後もこのような公演が増えていくことで、映画の楽しみ方の幅も増えるのではないだろうか。

(取材・文=泉夏音/写真=ヤオタケシ)
(C)2016「君の名は。」製作委員会

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