新宿JAM、2017年をもって閉店 ハードコアパンクの名作生んだ“ジャムスタ”の歩みを振り返る

 こうして数多くの名作をレコーディングしてきたジャムスタには多くの思い出が残っている。

 夜間はライブハウス営業があるため、夜中から朝までのレコーディングになるのだが、いろんな人間がレコーディングに遊びにきていたので、夜中にジャムスタへ遊びに行くと様々な繋がりができ、今でも交友関係が続いている友人も数多くいる。

 X JAPANのYOSHIKIともここでL.O.Xのレコーディングをし、YOSHIKIが歌うはずだった曲を、無理やりXのメンバー全員に歌わせてどうしても歌わなかったり、かなり酒に酔いながらもコーラスの音がズレていると、ピアノを弾いて何度もやり直しさせていたのもジャムスタだった。

 L.O.Xのレコーディングで初めて出会ったTHE FOOLSの伊藤耕さんは、筆者の人生に非常に大きな影響を与えてくれ、生き方が変わるほどの衝撃を与えてくれた最高の友人の1人である。

 その伊藤耕さんも、残念極まりないが今年の10月に亡くなってしまったし、LIP CREAMも、もう解散してしまっている。

 ほかにジャムスタでレコーディングをした数多くの素晴らしいハードコアパンクバンドも、数えるほどしか残っていない。

 そう考えるとジャムスタが老朽化でなくなるのも、寂しくはあるが必然のことなのかもしれない。

 しかし、ジャムスタでライブもレコーディングもしているGAUZEは、現役バリバリで日本のみならず世界のハードコアをリードし続けているし、SYSTEMATIC DEATHも復活して世界中で活動している。

 筆者が初めてジャムスタでレコーディングをおこなったDEATH SIDEも、復活して世界でライブをおこなっている。

 皮肉にもジャムスタを出入り禁止にされたハードコアパンクバンドたちが、日本中、世界中にジャムスタの息吹を運んでいることを、気づいてくれる人間がいるだろうか。

 残念ながらジャムスタは無くなってしまうが、日本のアンダーグラウンドシーンは終わらない。ジャムスタで培ったものは、ハードコアパンクバンドを通してこの世の中に存在し続けるであろう。

■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

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