150万枚突破の安室奈美恵と躍進続けるMy Hair is Bad それぞれがチャートアクションで示したもの

My Hair is Bad『mothers』(通常盤)

 数カ月前に彼らのライブを見ましたが、ボーカルの椎木知仁がやけに苛ついた様子で、歌うというより怒鳴るように叫んでいるのが印象的でした。楽曲は比較的ストレートなメロディのギターロックが中心ですが、歌の端々から、何かが足りない、まだ何も満足できない、という焦燥感や爆発力が伝わってきます。まさに25歳の生々しい感情でした。

 考えてみれば近年、ロック系で3万枚以上のセールスを誇るバンドは大人のバンドが多い印象でした。BUMP OF CHICKENにRADWIMPSは30代に突入し、スピッツやエレファントカシマシ、THE YELLOW MONKEYなど40〜50代のベテランもしっかり健在。彼らが安定したスタンスで名曲を量産するのはもちろん良いことですが、とにかく「今しかない!」という勢いや闇雲なエネルギーを求めるのはお門違いでしょう。激しさや爆発力が売りのラウド系にしても、マキシマム ザ ホルモンや10-FEETなどは実際いい大人になっていて、この時代にどんなメッセージを残せるか、そういう責任感や包容力を身に付けているわけです。

 そんなところに、25歳のマイヘアの勢いはとても新鮮。自分のことで手一杯という感じの焦燥は、良くも悪くも若いバンドにしか出せない魅力でしょう。「注目される若手のひとつ」だったMy Hair is Bad。このアルバムを機にどう躍進していくのか、注目していきたいです。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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