aikoのライブは常にスペシャルだーー攻めの姿勢と愛に溢れたツアー『Love Like Rock vol.8』

aikoのライブは常にスペシャルだ

 中盤のミディアム/バラードパートを除けば、ほとんどの楽曲がロックテイストの強いものばかりで、気づけば2時間が経過していた。さすがのZepp Tokyoもこの日ばかりは夏の暑さ以上の熱気が充満していたが、観客たちはそれでもアンコールを求めるハンドクラップや声援を響かせる。すると、ツアーTシャツに着替えたaikoやバンドメンバーが再登場し、切ないラブバラード「恋をしたのは」からライブを再開させた。この曲で会場の空気が一変したかと思いきや、aikoは続くMCで「出張に行っていた旦那さんが久しぶりに帰ってくるから、めっちゃ頑張って料理を作ったらめっちゃ濃い味になった、みたいなのがいつも最終日なんです」と言って場を和ませる。さらに「アンコールとはいえ、ここからは一世一代の大勝負の舞台ですから。しっかりとみんなに、たくさんの球を投げまくりたいと思います。みんなのハートに届きますように!」と言い放つと、「Loveletter」「キラキラ」と極上のナンバーをプレゼントして再びステージを後にした。

 アンコールで会場の盛り上がりがピークに達したものの、この日はツアー千秋楽。オーディエンスはさらなるアンコールを求めて声援を送り続ける。すると、ステージに戻ってきたaikoから「実は8月12日のライブで、骨折したんです、足」と衝撃的な告白が。左足を骨折し全治3カ月と診断されたものの、絶対にライブを中止にしたくないという思いからライブを強行。正直この告白がなければ、この日のライブも「いつもどおり元気いっぱいに歌い踊るaiko」との評価で終わっていたかもしれない。しかし、ライブ1本1本が彼女にとって当たり前のものでないように、我々観客側にとってもライブ1本1本が常にスペシャルなものなのだということを、このエピソードで強く実感させられた。痛みに耐えてツアーを最後まで強行したaiko、そして彼女を全力でサポートし続けたスタッフに賞賛を送りたい。

 そしてaikoは「魂の交換がしたい」と、観客とエールを交換。そのまま「エナジー」「mix juice」「鏡」の3曲を喉が瞑れんばかりに、すべてのパワーを歌に注いで、約3時間におよぶ熱演に幕を下ろした。aikoがステージを後にすると、エンドロールとともに千秋楽のためだけに用意されたスペシャル映像が流れ、最後は「骨折するほど楽しかったです!」という彼女の直筆メッセージで締めくくった。

 来年2018年7月17日にメジャーデビュー20周年を迎えるaiko。2017年は『Love Like Rock vol.8』を通じて、彼女および彼女のファンにとって改めてライブの重要性を再確認する1年になったのではないだろうか。だからこそ、20周年を迎える2018年はどんな活躍を見せてくれるのか、今から楽しみに待ちたい。

(写真=岡田貴之)

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

aiko Live Tour『Love Like Rock vol.8』
2017年9月7日 Zepp Tokyo公演セットリスト

01. 夢見る隙間
02. milk
03. 相合傘
04. Power of Love
05. なんて一日
06. 恋愛
07. プラマイ
08. ドライヤー
09. アンドロメダ
10. えりあし
11. 雨踏むオーバーオール
12. 恋のスーパーボール
13. 明日の歌
14. beat
15. 小鳥公園
16. 舌打ち
17. 赤いランプ
18. be master of life

<アンコール>
19. 恋をしたのは
20. Loveletter
21. キラキラ

<ダブルアンコール>
22. エナジー
23. mix juice
24. 鏡

aikoオフィシャルサイト

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