NOW ON AIR×杉山勝彦が語る、声優アーティストの強み「バラバラだからこその調和が存在する」

NOW ON AIR ×杉山勝彦 特別対談

杉山「6人とも、それぞれの声が立っていて面白い」

杉山勝彦

ーーではここから、楽曲の話を訊かせてください。映画『きみの声をとどけたい』のエンディング主題歌「キボウノカケラ」は、結城アイラさん作詞、杉山勝彦さんが作曲・編曲。楽曲は杉山さんが各所でみせる“らしさ”も効きつつ、Dメロ以降のアレンジが新鮮です。楽曲を制作するにあたって、制作側から挙がったテーマなどはあったのでしょうか。

杉山:僕が最初に彼女たちに提供したのは、1stシングルのカップリング「風が吹いた」なのですが、そのときには自分のこれまでの楽曲を聴いていただいたうえで、その風合いがマッチするということで声を掛けていただいたんです。そのレコーディングのときにメンバーの皆さんにはお会いしていて、「ほんとにピュアな子たちだ」という印象を受けました。今日みたいにキラキラしている衣装でもなかったし。

飯野:すっぴんでした。

神戸:たしかジーパンにトレーナーでした(笑)。

杉山:そうそう。しかもレコーディングで緊張していたから、表情が鬼気迫る感じで。真摯な思いや一生懸命さも感じたし、チーム全体がどこに向かっているかもハッキリ伝わってきたんです。で、今回のお話をいただいたときに「風が吹いた」がNOW ON AIRの雰囲気にマッチしたと言っていただいて。今回もその延長線上でありつつ、もう少し疾走感もある曲を、というリクエストを貰いました。

NOW ON AIR「風が吹いた」MV

ーー杉山さんの提供曲だと乃木坂46「君の名は希望」あたりに近い質感を覚えたのは、同じような“透明感”があったことも影響していたり?

杉山:今日みたいな格好を見たら、もう少し派手でもよかったかなとも思ったりしますけど、スタジオで会ったときは「こんな良い子たちが芸能界に入ってしまって大丈夫か……」と心配したくらいですから(笑)。

ーーみなさんは「風が吹いた」を受け取ってみて、どういった印象を持ちましたか?

飯野:「歌いたかった曲が来た!」という感じでした。この曲は歌いやすいし、聴き手としても好きな曲なので、「本当にこれを私が歌っていいの?」と嬉しくなりました。

鈴木:自然とカラダに入ってくるというか、歌えば歌うほど愛が溢れてくる、不思議な魅力がある曲だと思いました。

岩淵:私の場合、電車に乗っている時にデモの音源が送られてきたんですが……受け取って聴いた瞬間、一人で「ウェーイ!」って。

他のメンバー:怖い!

杉山:えっ、どういうこと?

岩淵:実際に声に出しちゃったんです。向かい側に座っている人にも聴こえるくらいに。

岩淵桃音

ーー岩淵さんはそういう一面もあるんですね(笑)。それくらい驚くクオリティだったと。片平さんはどうでしょう?

片平:私は「あっ……好き……」と思って、お母さんにすぐ報告しました。

神戸:私、元々カップリング曲って「何となく良さげなバラードが入っている」という勝手なイメージがあるんですけど……。

杉山:リラックスした途端、急に毒づき始めたね(笑)。

神戸:でも、「風が吹いた」はそんな決めつけをふっとばすくらい、「これが表題曲でもおかしくない!」と興奮したのを覚えています。

田中:私も「えっ、カップリングこれなの!?」って興奮して。Dメロの部分がすごく好きで、みっちゃんにすぐ連絡して「最高だわ」と語り合っていました。

田中有紀

ーーちなみに杉山さんは、6人の声質について、どのような特徴があると分析しますか?

杉山:6人とも、レコーディングされた音源も普段の話し声でさえも、それぞれの声が立っていて面白いんですよ。普段はアイドルグループで声を揃えるようにすることが多いから、違った魅力を感じてめちゃくちゃ楽しいです。

ーーユニゾンしていても、それぞれのソロくらい声が立っているというか。

杉山:そう。重なっていてもそれぞれの声がわかるんです。それについては一つ印象に残っているエピソードがあって。「風が吹いた」の製作時、ランティスの木皿(陽平・μ'sのプロデューサーとしても知られる)さんが最後のバランスを取るときに、「全体のバランスはこれでもいいけど、このあたりをもう少し足すとNOW ON AIRの潤うべき声になる」と解説してくれて。その最後のひとチェンジでめちゃくちゃ見違えるように良くなったのに感動しました。

メンバー全員:へえー!

杉山:ほんと、あんなにみんなの声を聴いてくれている人はいないと思うよ。声質がバラバラだからこそある「調和」というのが存在するという、僕が知らない分野だからこその学びもありました。

ーーその経験はやはり「キボウノカケラ」にも活きたのでしょうか。

杉山:そうですね。バラバラなものを作ることも出来るんですけど、そうすると「なにがNOW ON AIRらしいのか」が分からなくなると思うんですよ。かと言って保守的なものをやるだけではなく、一つ一つ未来の見えるようなものを作ろうと思っていました。それと、言葉をハッキリ歌うようなメンバーが多いので、その特徴がハッキリ活きるように階段のフレーズを多くするなど、考えた部分はあります。

NOW ON AIR 「キボウノカケラ」MV

ーー確かに、階段的なフレーズが多くてキャッチーな印象を受けましたが、彼女たちの声ありきのものだったんですね。ほかにもNOW ON AIR曲だからこそできた挑戦というのはありましたか?

杉山:ピアノが骨格になっている曲は今までも沢山作らせていただいていたのですが、「どういう変化を付けたら彼女たちらしくなるか?」というテーマがあって。それを木皿さんに相談しながら、木管やシンセを入れるなど、いつもはやらないようなトライをしています。

ーー確かに、木管の音色は新鮮ですね。せっかくなので、メンバーが考える「キボウノカケラ」の聴きどころも教えてください。

飯野:私は落ちサビのソロをいただいているので、そこが特に一押しです。レコーディングのときは「可愛さ3割増しで! いや、もっと!」と3割増し続けていて、いつもよりも可愛さ多めの曲になっているんですけど(笑)、ライブだと歌い上げる感じになっているので、その違いも含めて聴いてほしいです。

鈴木:私のお気に入りはAメロですね。可愛くて爽やかさもあって好きですし、振付も演技をするような振りが多くて面白いんです。

岩淵:私はイントロのキラキラした感じが好きです! 「ここから何かが始まるんだ」とワクワクする感じで。

ーー歌が始まるまでのイントロの長さも特徴的ですもんね。片平さんはどうでしょう?

片平:私はサビの<真っ青な空にかざして 誓った言葉は>のところが好きです。何回聴いても言葉では表せないくらいグッときます。

神戸光歩

神戸:私はソロパートももちろんなんですけど、Dメロの<簡単じゃない~>のところ。私も「かわいく!」と乗せられて、みさみさ(飯野)とかに「誰が歌っているかわからない」と言われたりもしたんですけど(笑)。

飯野:イントロのドラムの話はしなくていいの?

神戸:そうだ! イントロの途中からドラムが入ってくるんですけど、そこがすごく好きで。自主練していても、一人だけドラムパートを歌ってるんです(笑)。

杉山:ドラムパートを歌うってどういうこと?

神戸:振付の確認をするとき、アカペラでみんなメロディを歌うんですけど、私だけ「ズンズクダンズク」ってドラムのパートを歌っていて(笑)。

田中:私は……Dメロです。キラキラしている中で、ここは雰囲気がガラッと変わって訴えかけるような感じがします。あと、最後の歌からアウトロにつながっていくところも、さらに曲が力強くなるような印象で好きです。

杉山:みんな切ないのが好きなんだね。なるほど。ちなみに、自分としては「どうやって歌いたい」みたいな思いはあったりするの? 「もっと叫びたい!」とか。

神戸:私はバラードで使うようなロングトーンが好きです。

杉山:そういうの、すごく大事だと思いますよ。音楽を考えるみなさんにアピールしておくと、意外な形で叶うことだってあるから。

飯野:私はロックな歌い上げる曲が好きですね。BABYMETALさんもすごく好きで。でも、ただアップテンポを歌えばいいというわけではなく、語りかける感じの曲が好きです。

杉山:確かに、今の話を聞く限りだと、みんな割とカッコいい系の曲が好きなんだね。

飯野:そうですね。NOW ON AIRでは「可愛いの、歌っていいんだ……」と思いました。

神戸:可愛いものに縁がない人生を生きてきたんですよね。

ーーどこか深い闇を感じますね……。

飯野:先程杉山さんが話してくださった印象が普段の私たちで、他のアーティストの方と同じ楽屋になっても「わたしたち、地味かな」と思うこともあるんです。でも、こうやって可愛い服を着せていただけるようになり、ライブをさせていただくようになって「こういうの、やってもいいんだ」と日々気付かされています。

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