androp×Creepy Nutsが語る、ジャンル越えたコラボの意義「普通だと思ってることが新鮮になる」

androp×Creepy Nuts対談

「Creepy Nutsは自分たちの音楽性やソウルを大切にしている」(伊藤)


――一方、R-指定さんも夏のモチーフをたくさん引っ張ってきています。

R-指定:俺の考える夏感を持ってきました。一見「ウェーイ!!」って楽しむ夏に馴染めないやつが文句を言ってるような構成ですけど、その楽しめないで文句を言ってること自体が、実は「SOS」の信号なんですよね。それで最終的には「誘えよ!」って言うという(笑)。

内澤:Rくんのバースは色んな方向に聴き手を連れて行ってくれるというか、ストーリーや情景が変わっていくような雰囲気で、すごく勉強になりました。僕らは他のアーティストと一緒にやることも少ないですし、僕個人としても歌詞の共作はやったことがなかったので、ストーリーの展開の仕方や言葉のチョイスにものすごく刺激を受けました。

佐藤:最初に2人が書いた歌詞を聴かせてもらったときは、(演奏に対して)「こういう感じで言葉が乗るんだ……!」と衝撃を受けましたね。ちゃんと読みこんでいくと、色んな工夫があって何度も考えさせられるので、なるほどなぁと。しかも、その日のうちに内容がどんどん変わっていって、歌の部分もその場で話し合って変わったんですよ。

R-指定:掛け合いのところは、最後にみんなで考えました。もう夜中だったんですけど、最終的に内澤さんと僕とで「それじゃあ大きな声で、みんな騒げー!」みたいなものも録って、それを聴き返して爆笑したりして。

androp 佐藤拓也

佐藤:「果たしてこれはいいんだろうか……?」ってね(笑)。そうやって色んなパターンを録ったんですけど、一番勢いがある最初のパターンに落ち着きました。最初は曲の中でラップとメロディが交互に出てくるだけだったんで、「一緒に絡む部分があった方が面白いよね」という話になってできたパートですね。Rくんが、「『(S)さっきから(O)お前(S)シラケてね?』って面白くない?」と言ってくれて。これも頭文字が「SOS」なんですよ。

R-指定:それで最終的に、2組が対峙して、一緒に夏を楽しむ歌詞になりました。

――そしてサウンド面でも、andropとCreepy Nutsの違いが綺麗に表現されています。

DJ松永:歌詞で内澤さんとRの主張が真逆になっているんで、サウンド面でも違いをつけられたらと思ったんです。僕のバースは、andropらしい爽やかで夏っぽいサビの雰囲気から一気に落として、冷たい雰囲気にするためにがっつり打ち込みにしました。実はデモを聴いた時点で、「もう触らなくてもいいんじゃないか」とも思ったんですけど(笑)。

R-指定:最初のデモからよかったよね。僕らは「アホなことをやりたい」というテーマがあったとしても、最初は「andropの世界観での『アホなこと』って、どんなものかな?」と思っていて。それが、デモの再生ボタンを押した瞬間に「ターンターン、タ、ター!!」って「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れて「おお、アホや!」と(笑)。俺らはそこから爽やかなメロディが来てからのバースなので、それをどう壊していくか、汚していくかを考えました。松永さんのトラックは、かっこいい爽やかなサビの後に、夏を楽しもうとしているやつの後ろをつかまえてガーッと引っ張るような音の沈み方になっていますよね。

――ファンキーさはあるものの、夏感を出し過ぎない絶妙なバランスで。だからこそ、andropが担当した夏っぽくて爽やかなサビが活きるようにも感じます。

内澤:そうですね。僕らは僕らで、自分たちがこれまでやってきた核もちゃんと伝わるようにしつつ、振り切れていきました。Creepy Nutsが変えてくれたトラックに刺激を受けて、僕らの方でもまた変化させて――。それを繰り返して最終形になったので、タッグを組んでいなければこうはなっていなかったと思います。

――今回の作業は、お互いの魅力をより深く知る機会にもなったんじゃないですか?

R-指定:もちろんです。andropの音楽には、デモを聴いた時点で歌詞が乗っていなくても「いい曲になるだろうな」と分かる、意味や理屈がなくてもかっこいい作曲の素晴らしさを感じたし、バンドで演奏したときに、それが生きた音楽になるのもすごいと思いました。

内澤:お互い畑が違うので、Creepy Nutsの2人が普通だと思っていることが、実は僕らにとって新鮮だったりもして。たとえば、現代の技術だと一行だけを差し替えて歌うことも可能なのに、Rくんは全体のノリを俯瞰して見ていて、納得できない箇所があったら、もう一度全部を録り直すんです。「これは俺たちの今までの考えにはなかったものだな」と感じましたね。「確かに全体のグルーヴってあるよなぁ」と。

佐藤:あと、お披露目としてリキッドルームで「SOS! feat. Creepy Nuts」を一緒に演奏したときは、ぶっつけ本番だったんですよ。でも、2人は「マイクとミキサーさえあれば、現地のターンテーブルでいいよ」という感じで。バンドの場合は楽器と色々なスタッフの支えがあってようやくライブができるので、それもすごいと思いました。ライブも完璧に決めてくれるんですよ。

R-指定:逆に、俺らには生音の迫力は出せないんで。「ジャンッ!」って弾いた音や「ダンッ!」って叩いた音が会場に広がる感じや、その音に負けない歌声は、絶対に出せないんです。リキッドからの帰り道も、ずっとその話をしてました。andropのみんなは「身ひとつでかっこいい」って言ってくれて、俺らは「いやいや、楽器も弾けないですし」って。

androp 伊藤彬彦

伊藤彬彦(Dr/以下、伊藤):Creepy Nutsの2人は音楽からイメージするより物腰が柔らかいし、柔軟なのも印象的でした。僕らはコラボレーションが初だったので緊張していた部分もあったんですけど、本当に話しやすくて。でも、いざ音楽を作るときにはすごく芯を感じたし、自分たちの音楽性やソウルを大切にしていることが、音にも表われていますよね。それに、Rくんのメッセージ性って突き放すだけではなくて、それは僕が内澤くんに感じる魅力とも似ているんですよ。だから、表現方法は違いますけどお互いに似た部分を感じたし、初めてのコラボレーションとして最高の相手だったと思いますね。

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