アーケイド・ファイアからBSS、モッキーまで……個性豊かなカナダ出身アーティストの新譜5選

ファイスト『PLEASURE / DIGIPAK』

 さらにBSS関連のアーティストを。BSSのメンバーであり、シンガー・ソングライター、ファイストだ。プロデュースを担当したのは長年の付き合いのモッキーとルノー・ルタン。ゲストには旧友のチリー・ゴンザレスをはじめ、ジャーヴィス・コッカー(Pulp)。カナダの鬼才サックス奏者、コリン・ステットソンなどが参加している。「自分の素に近い状態で作った」と彼女が語る本作は、音数を絞り、ローファイな質感を持ったサウンドが特徴。感情を剥き出しにした歌声に加えて、ギターの演奏もエモーショナルで力強い。ブルージーなムードを漂わせながら、そこから官能的な美しさが匂いたつ刺激的なアルバムで、今年11月に予定されている久々の来日公演も楽しみだ。

Feist - Pleasure
モッキー『HOW TO HIT WHAT AND HOW HARD』

 そして、最後に紹介するのは、ファイスト以外にも、ジェイミー・リデルやジェーン・バーキンなど様々なアーティストのプロデュースを手掛けてきたモッキーの『How To Hit What And How Hard』。ほとんどの楽器をモッキーが演奏していて、盟友チリー・ゴンザレスや、LAの音楽シーンのキーパーソン、ミゲル・アトウッド・ファーガソンなどが参加。R&B、ファンク、ジャズなど様々なリズムを取り入れながら各曲をミックステープのように繋いでいく本作は、自由気ままなグルーヴ探求の旅。美しいメロディや繊細なアレンジも光っていて、アルバムを包み込むメロウネスも心地良い。ちなみに本作は海外では配信のみなので、CDで楽しみたい方は素敵な紙ジャケ製の日本盤でどうぞ。

 
 

■村尾泰郎
 ロック/映画ライター。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などで音楽や映画について執筆中。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『はじまりのうた』『アメリカン・ハッスル』など映画パンフレットにも寄稿。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。

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