ヒントン・バトルが語る、傑作ミュージカルに不可欠な5つの要素とスクール開校の理由

ヒントン・バトルが語る“不可欠な要素”


多くの日本人がブロードウェイで活躍する日も近い

――HBDAの育成方針は「日本のみならず世界で活躍するダンサーを育成すること」ですが、実際のところ日本人がブロードウェイで活躍するにはまだまだ難しい壁があるのでしょうか?

ヒントン:実情はすごく変わってきていると思います。確かに(ブロードウェイに出演する)アジア人は日本人より中国人のほうが圧倒的に多いという時代もありましたが。2年前に『Road To BROADWAY』(※ヒントンプロデュースによるブロードウェイを目指すダンサー発掘企画)というオーディション番組をテレビ東京などで放送していたんですが、最終的に6人のメンバーが選ばれ、そのうちの1人の北折香保里は最近ロサンゼルスに拠点を置いて、向こうでオーディションを受けてエージェントも決まりました。それは僕も知っているすごく信用できるエージェントなので、今後ブロードウェイや、ロスなのでテレビや映画でも活躍してくれると信じています。

 ブロードウェイに関して言うと、今、吉本興業と一緒にブロードウェイで上演する公演を作るというプロジェクトも進めています。実現すればHBDAのダンサーはもちろん使いたいですし、多くの日本人がブロードウェイで活躍する日も近いと思います。

――以前、ヒントンさんにお話を伺ったとき「日本のダンサーはマネをするのが上手だ」とおっしゃっていたのが印象に残りました。それも踏まえて、ミュージカルのパフォーマーに必要不可欠なものはなんだと思いますか?

ヒントン:良い質問かつ難しい問いですね(笑)。まず日本人は、個人としての主張をあまりしない環境で育っていると感じます。一方アメリカは個人であることが大切で、自分をどう表現できるかがすべてです。その中で今、生徒たちには、自分を表現する力をどうやって養うかを教えています。自分をうまく表現できている子とできてない子といるので。

 目標としてほしいのは、周りがマネできない“自分自身”になること。子供のときから親しんできた慣習を変えるのは非常に難しいし、異文化を理解するのに時間がかかるのは当然です。大変なことではあるけどチャレンジしていきたいと思っています。そうすれば、日本のダンスの風潮や文化自体も徐々に変わってくるはずです。

傑作ミュージカルに不可欠な5つの要素

――ブロードウェイ公演の構想がすでに始まっているとのことなのでお伺いします。ヒントンさんの考える最高のショーの定義とは?

ヒントン:僕の理想のブロードウェイショーは、お客さんがチケットを買って来てくれて素晴らしい時間を過ごしてくれるショーです(笑)。

――ごもっともですね(笑)。

ヒントン:挑戦的で、かつお客さんの興味を引き、感情移入できるようなもの。もちろんダンスがいっぱいで、いい物語で、いい歌がたくさん入ってる。つまり、いかにお客さんの心を動かすことができるか。そこに尽きるかなという気がします。

――6月に今年のトニー賞が発表されましたけれども、ニューヨークでも斬新で挑戦的なミュージカル作品が毎年生まれてますよね。今のブロードウェイの潮流についてはどう思われますか?

ヒントン:実は、7月に一度帰国してブロードウェイのショーを20作くらい見てくる予定なんですよ。確かに今いろいろなジャンルのブロードウェイショーが行われていて、それぞれ全く違うカラーを持っているので、トレンドというと正直難しい……。ですが、優れたものに不可欠な要素を挙げると5つあります。1つ目はお客さんが楽しめること、2つ目はエンタテインメント性があること、3つ目はキャラクターに共感できること、4つ目は歌が素晴らしいこと、5つ目はストーリーがしっかりしていること。この5つの要素がなければ成功しないというのは確実に言えます。

――では、HBDAの生徒にはその5つをすべて満たすようなパフォーマーになってほしいと。

ヒントン:そうです。今はダンスを重点的に教えていますけど、将来的にはアクション、コメディ、発声、歌などにも広げて、バランスよくなんでもできるパフォーマーを育てるのが大きな目標です。そういったパフォーマーになれれば、この先キャリアの中でダンスが一切ないような作品に出演したり、フィジカルなコメディの舞台に立ったり、いろんなことができるようになりますから。

 例えば吉本の芸人さんも、お笑いだけでなく歌を出していたり本を出していたりしますよね。ジャンルとジャンルの垣根がどんどんなくなってきている時代なので、私たちも時代に見合ったなんでもできるパフォーマーを目指しています。

――最後に、今後のアカデミーの展望とあわせて、読者に向けてメッセージをいただけますか。

ヒントン:HBDAの卒業生には、日本の新たなエンタテインメントの分野を構築してほしいと思っています。生徒たちにはエンタテインメント業界で働く人間として一流になれるようにすべての知識やツールを渡しているつもりです。生徒の中には「(表舞台に立つのではなく)振付師になりたい」という子もいるし、得意なこともジャンル個々のダンス、演技、歌など、さまざまです。いろんなツールを渡された中から自分自身でどういうことができるか、それぞれが考えることで新しいものがどんどん生まれていくはず。それがHBDAが目指していることであり、読者の方々も楽しみに待っていてほしいことです。

 毎年、年度末の3月にはショーケースも予定していて、業界関係者や一般の方々に見ていただきたいと考えています。中身は今考えているところですが、もしかしたら何か日本の伝統と現代的なものを組み合わせたパフォーマンスが出てくるかもしれません。いろいろ考えているので期待していてくださいね。

(取材・文=鳴田麻未)

■アプリ情報
ヒントン・バトル氏監修のスマートフォン専用ダンス情報アプリ『HINTLE』がリリース

HBDAメソッドの基礎レッスンや、ブロードウェイ&本場ダンス情報をいつでも持ち歩けるスマートフォン専用アプリ、その名も「HINTLE」がリリース。ヒントン・メソッドや、ブロードウェイ&本場ダンス情報やNY・LA発トレンド&ヒントン×有名人との対談コラムなどが随時更新される「オリジナル DANCE COLUMN」や、ヒントン・バトル監修のもとにダンスの3Dデータを製作、レッスンポイント付きでスマホだけでダンスの基礎が学べる「ヒントン アプリ限定 LESSON」など盛りだくさんのコンテンツに。

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