牧野由依が語る、声優アーティストとしての変化と葛藤「断食状態を経験したからこそハングリー精神が芽生えた」

牧野由依が明かす、変化と葛藤

「やっていいならやった方がいい」というものが自分の根本にある

ーー冒頭にもあったように、今の牧野さんは、声優として幅広い活動をするようになったことが音楽活動にも影響したりと、2つの活動がバランス良く影響しあっているように見えます。

牧野:バランスを取っているという意識はなくて、やりたいことができるありがたさを感じる日々ですね。もちろん人間は24時間が平等に与えられているので、手を広げれば広げるだけ自分の首を絞めるんですけど(笑)。でも、考え方として「やっていいならやった方がいい」というものが自分の根本にあって。ピアノを弾いていいなら弾きますし、歌詞を書いていいなら書くんです。やっぱり「私の曲です」って自信をもてるかどうかは、自分がどれだけその作品に真摯に向き合って関わることができたかで変わってくると思うんですよ。作品に応じて自分がどこまで関わるべきかは毎回相談しますけど、今回なら自分でピアノを弾くことでインストにも興味をもって貰えるようにプロモーションできたり、説得力の持たせようも違うのかなと。いろんな作家さんたちが書いてくださる歌詞も素敵なんですけど、本人が詞を書くことで興味をもってもらえるのであれば、そういう機会もあっていいと思っているので。

ーー先に音楽家としてのキャリアがあったのも大きいかもしれませんが、牧野さんは声優アーティストとして音楽に向き合う密度がシーンにおいて最も濃いといえる方ですし、楽曲への関わりを強く持てるというのは、他にない強みだと思います。

牧野:ありがとうございます。そうやって音楽活動としては充実できていたんですけど、声優としての活動が少なくなって、中々バランスが取れない時期もあったりして……。やっと少しずつ声優の仕事が増えた時期も「ここは声優としての地盤を固めなければいけないから」と歌に対して距離を取ることになって、歌いたいのに歌えないという期間もあって。今は私にもともと足りなかったハングリー精神が芽生えて、欲張りになったからこそ色んなものに挑戦するようになったんだと思います。

ーーこれまでハングリー精神はあまり無かったんですか?

牧野:全く無かったです。与えていただいたことを一生懸命やることに必死で、自発的に何を考えればいいのかわからなかったんですよ。デビューが19歳のときで、子役の活動はあったものの普通の音大生だったのに、歌のオーディションを受けに行ったら声優としても審査されることになり、あれよあれよと主題歌もヒロインとしての出演も決まって。あっという間にデビューをすることになったり、ありがたいことなんですけど、当時の自分にとってはがむしゃらにやるしかないし、学校の成績も落とすわけにはいかないしと、ハングリーとは真逆で「常に満腹状態」で、これをいかに消化させるかを考えていたんだと思います。その時期が過ぎて、一度断食状態みたいなものを経験したからこそ、ハングリー精神が芽生えたというか。

ーーでも、その満腹状態の時に得られたものに対して、消化不良を起こさずにしっかりと養分にしたからこそ、生まれたものもあるんだと思いますよ。

牧野:なるべく消化不良の部分は見せないようにやってきましたけど、たまに「フォアグラになっちゃうんじゃないか」という時期もありましたよ(笑)。最近も新しく消化すべきものが増えていて、その中でもダンスは大きいですね。元々運動神経がそこまで良くなくて、ダンスも本当に苦手だったんですけど、『アイドルマスター シンデレラガールズ』に関わることで踊らなければいけなくなったんです。でも、やるからにはしっかり出来るようにという負けず嫌いの部分が発動して、今のレッスンの先生に「こんなに上手くなるもんなんだ!」と驚かれるくらいにはなりました。もちろん、歌でもピアノでもダンスでも、声優のお仕事に関しても、上には上がいるのはわかっていますし、課題がなくなったら終わりだなと思っているので。

ーー冒頭の話に戻りますが、だからこそ毎回のライブで大きな課題を設けてトライしているのかもしれませんね。公演の密度が濃くて、これがたった1回のライブで終わるのかと思うと勿体なさも感じます。

牧野:公演自体もそうですし、グッズにもこだわったりするので……(笑)。せっかく来ていただけるなら、牧野由依の歌も聴いてほしいし、クラシックをライトに聴けることも感じてほしいし、グッズも日常使いできるものを中心に工夫したいから、今治タオルを扱ったりするんです。

ーー7月にAiiA 2.5 Theater Tokyoで行なう『Yui Makino Live「Reset&Happiness」』は、追加公演も決まったそうですね。どんな内容の公演になる予定でしょうか。

牧野:「Reset」を前面に押し出しつつ、公演を充実させるための工夫を考えています。初めての試みとしては、格好いい感じのイントロダクションをつけようと思っています。そこで何をするかはお楽しみです(笑)。

ーー『YUI MAKINO LIVE―Thanx Beginning♪―』に続いて、冠に「Live」が付いているところも気になります。

牧野:今までは「Concert」という名前をつけて、着席スタイルでクラシックパートを用意したり、「Live」との差別化をしていることにこだわりがあったんです。『YUI MAKINO LIVE―Thanx Beginning♪―』では「Live」をタイトルに入れて歌い踊ったわけですが、公演が終わってから、そこに垣根を作ることは必要なのかなと考えるようになったんです。もちろん会場によってはコンサートにふさわしいものもありますけど、色んな牧野由依を観てほしいから、タイトルや内容もどっちかに寄せたくないんです。おそらく自分の中で「こうでなくちゃいけない」という固定観念がなくなっているのかもしれません。

ーー固定観念、ですか。

牧野:私が勝手に「Concert」と「Live」と分けていたわけですが、お客さんの楽しみ方は私が決めるものではなくて、自然と楽しめるものを私自身が作れるに越したことはないなと考えるようになりました。だから、その中で着席スタイルで見せる部分もあれば、歌い踊るパートがある「Live」もあっていいと思いますし、そういう意図もあって、今回は「Live」と言いながらグランドピアノを導入していて、ピアノもしっかり弾いちゃおうかなと思っているんです。

(取材・文=中村拓海)

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牧野由依『Reset』(初回限定盤A)(C)河野裕・椎名優 / KADOKAWA / アニメ「サクラダリセット」製作委員会



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牧野由依『Reset』(初回限定盤B)



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牧野由依『Reset』(通常盤)

■リリース情報
New Single『Reset』(TVアニメ『サクラダリセット』オープニングテーマ)」
発売:6月7日(水)
初回限定盤A (CD+DVD、書下ろしイラストジャケット仕様)¥1,852(+税)
初回限定盤B(CD+DVD)¥1,852(+税)
通常盤(CDのみ)¥1,111(+税)

<初回限定盤A 収録内容>
M1.Reset
M2.Colors of Happiness
M3.Reset(TV-Size)
M4.Colors of Happiness(TV-Size)

<初回限定盤A DVD収録内容>
「Reset」 Music Video + Making of「Reset」 Music Video

<初回限定盤B 収録内容>
M1.Reset
M2.Colors of Happiness
M3.Reset~Acoustic Version~
M4Reset~Acoustic Version~(TV-Size)

<初回限定盤B DVD収録内容>
Documentary of「Reset」 Recording

<通常盤 収録内容>
M1.Reset
M2.Colors of Happiness
M3.Reset(Instrumental)
M4.Colors of Happiness(Instrumental)

■ライブ情報
『Yui Makino Live「Reset&Happiness」』
公演日:7月15日(土)、2017年7月16日(日)
開場:17時00分/開演17時30分(7月15日)、16時30分/開演17時00分(7月16日)
会場:AiiA 2.5 Theater Tokyo
6月17日(土)チケット発売
HOT STUFF PROMOTION

■リリースイベント情報
『牧野由依「Reset」発売記念スペシャルイベント』@東京
会場:東京・ららぽーと豊洲 シーサイドデッキメインステージ
日時:2017年6月10日(土)1回目 12:00スタート、2回目 14:00 スタート

『牧野由依「Reset」発売記念スペシャルイベント』@兵庫
会場:兵庫・阪急西宮ガーデンズ 4階スカイガーデン・木の葉のステージ
日時:2017年6月11日(日)1回目 13:00 スタート、2回目 15:00 スタート

■関連リンク
オフィシャルサイト
レーベルサイト

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