天才バンドが考える、“即興演奏”の醍醐味 「バンドはどうやって生きてきたのかを発表する場所」

天才バンドが考える、“即興演奏”の醍醐味


「自分たちが知らないストーリーを自分たちがめくっていく」(Sundayカミデ)

ーー前作、普通に録った曲とスタジオでアドリブでセッションで録った曲の、実質2枚分みたいなアルバムだったじゃないですか。今作も、普通に録った5曲とライブ録音10曲の二部構成になってますよね。こういう作り方は、天才バンドにとって必然なんですかね。

Sunday:そうですね、必然といえば必然というか。スタジオで、ワッと音出す感じは……ライブでもそうですけど、二度とやらない感がすごくいいなと思ってます。「すごいかっこいいフレーズ出てるけど、この曲やらんねやろなあ」とか思いながら(笑)。

ーーじゃあスタジオの方でも一発に近い感じなんですね。

Sunday:そうですね。奇妙さんは、どんなやり方しても、すごい気持ちいい感じで音出してくるんですけど。「一回こんな感じでやりましょか?」言うて、3人でやって、「あ、よかったな」と思って、ちょっと休憩とかしてたら、奇妙さんがスタジオでひとりで、ギター持ち替えたりして、全然違うアレンジでおんなじ曲をやりだしたりして。「それもいいね」ってレベルじゃなくて、めちゃくちゃいいんですよ。だから、それはそれで録ってみたいし。「これ一生レコーディング終わらんな」っていう怖さはありました(笑)。誰かが「はい終了!」って言ってくれないと終われないぐらいの。

ーーライブテイクの方も……「ライブを作品で残すべきだ」と周囲に言われるので、音源と映像で残すことにしました、みたいなことがクラウドファンディングのページに書いてありましたけれども。このライブ音源を聴くと「確かにこれは残すべきだなあ」と。

Sunday:あ、ありがとうございます。

ーー「冷やしてる」から「足なおった」のあたりとか、すごすぎますよね。Sundayさんがライブ中に足をケガして、冷やして、治ったということアドリブで歌って、それがすばらしい曲になるっていったいどういうことなんだ?と(笑)。

Sunday:一瞬治ったと思ったんですけどね、あの時。

奇妙:治ってないし、全然。まだ痛い?

Sunday:まだ痛い、今も。

ーーライブで「おもしろい」と「すばらしい」とか、「笑える」と「美しい」が共存することってありますけど、普通それって1本のライブの中に、点みたいにバラバラにあるもんだと思うんですね。

Sunday:そうですよね。

ーーでも天才バンドは全部つながってるんですよね。笑えて美しいひとつのものになってるというのが不思議で。

Sunday:それが僕もねえ、ワンダフルボーイズをやってて……昨日も岐阜のフェスで、ワンダフルボーイズが出て、そのあと天才バンドが出るっていうのがあったんですけど。ワンダフルボーイズは、「フレーズはこう」って全部メンバーに指定して、「とにかくアンサンブルを意識して演奏してください」って……そのよさもあるんですけど、天才バンドで、まだ見ぬページをめくりまくっていくみたいなライブになった時は、「こんな壮大なこと、あってはならん」みたいに思えるくらい、すごいなと思いますね。簡単に言ったら、ワンダフルボーイズは自分の思い描いてる音をそのまま出すために練習するんですけど、天才バンドは思ってもない音が出てきて、それに自分を合わせていくみたいな感じ。だから、すごいお互いが引き出し合ってるなと思うんです、天才バンドは。

奇妙:Sundayさんには、いろんな部分があってそれをいっぱい見たいなと思うので、いろいろ頼んでみるっていうのはありますね。Sundayさん、すごいがんばり屋なんですよ。頼むと、適当に終わらしたりしないんで。……なんか、全部にホスピタリティ感じるなって。

ーーホスピタリティ?

奇妙:「こう見られたい」とか「気に入られたい」じゃないんですよね。基本的にそういう生き方になってるんやなあと思って。自分にはそういうところがないから、この人がおることで、すごい助かるなあというのがあるんですよね。最初の頃は、自分の身体能力をここで全部試す、みたいな。どんだけ声出るんか、どのぐらい楽器弾けんのか、どんぐらい身体動くんかな、とか、いろいろ試そうと思ってやってたんですけど。だから全然お客さんの方を見てなかったんですけど、急にそれがつまらんくなって。お客さんとコミュニケーションとって、なんかになるんが、今はすげえ楽しいです。最近はそういう感じですね。

ーーテシマさんはいかがですか。このふたりに要求されることが大変だったりはしない?

テシマコージ

テシマ:まあ大変な部分もありますけどね。

Sunday:言ってる意味がわからんとか?

奇妙:「なんかこいつらイライラしてる、でも何言ってんのかわからん」とか。

Sunday:「壊れろ! 壊れろ!」とか言うから。僕たちもね、前はわかりやすく言ってたと思うんですけど……自分のミュージシャン、演奏家としての部分が、天才バンドやともうむき出しで。「バーンていきたい!バーンてなりたい!」みたいなモードに、リハーサルから入ってたりするんで。3人集まると、説明がヘタクソになるというか。テシマに「もっともっともっと! いや、違う違う違う!」しか言うてないとか。

ーーライブテイクを聴いていると、3人ともえらいことを要求されてるなってつくづく思いますね。「バンドってこういうものなのか!」という。

Sunday:そうなんです。だからね、そこがいろいろ考えさせられるところでもあります。さっき言った、自分たちが知らないストーリーを自分たちがめくっていくっていう壮大なことを、3人でやってるっていう。そういうことが、自分のバンドとか、ほかのユニットではたぶんできないから。二度とできない寂しさもあるし、これを違うところでやれない葛藤もありますね、天才バンドは。なんでこうなったのかも説明できないっていうのが、ライブが終わって帰る時の……「説明できないけど、すごかった、ありがとう」みたいな感じです。

ーーやってることはロックもしくはポップスなんだけど、手法はフリー・ジャズみたいな。

テシマ:(笑)。

Sunday:そうですねえ。

ーーSundayさんがゲソ天をゲリ天って読み間違えたって話から、アドリブであんなきれいなメロディが出るとは思わないですもん(笑)。

Sunday:そう、あれはすごいですよね、奇妙さんのあの即興力は。僕のミスをね、簡単な言葉で、いいメロディにして。

奇妙:……あれ、すごいミスチルっぽくないすか?

Sunday:ええっ? そう思ってたんすね?

奇妙:あの、「♪何を犠牲にしても~」っていう。

Sunday:ああ、「Everything」。誰も思ってないと思う(笑)。

ーーだから聴いていると「そもそもバンドとは何か」ってことまで考えさせられるというか。

Sunday:それね、僕は深く考えないようにしてます、やる以上。深く考えてしまうと、どうせ迷宮入りするやつなんで。でも、ひとつのバンドのあり方として、すごいなと思ってますけどね。誰が指揮をとってるわけでもなく、なんとなく集まった感じもありながら、でも、会ってない間どうやって生きてきたのかを発表する場所でもあるし。自分がぬるく生きてたら、天才バンドのライブについて行けなかったりするんで。そういう緊張は常にありますよね。

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