モーモールルギャバンが語る、葛藤と向き合った2年間「才能なんていうのは主観でいい」

モーモールルギャバンが語る、2年間の葛藤

ゲイリー「自分が思っている以上にバンドが好き」

──その、酩酊の顛末みたいなものが、インパクト抜群のサウンドとなったのが、アルバム1曲目の「AKABANEの屍」ですかね。

ゲイリー:「AKABANEの屍」も実話ですね。赤羽で酔っ払って、帰りにどの電車に乗っていいかわからず適当な電車に乗ったら、箱根山の麓の方まで行っちゃって。その辺のネットカフェで一泊して、翌朝家に帰ったという思い出を歌ったのが、「AKABANEの屍」です。

──こうした破壊力満点の曲がオープニングになったことも、ただならぬアルバムだと感じさせます。ちなみに、今回の曲作りはどのくらいの期間行なっていたんですか。

ゲイリー:今回のアルバムはできるだけライブでやって、お客さんの反応を見ながら作品づくりに反映させたいという思いがあったので。曲作りに着手したのは、結構早かったんです。去年の11月にツアーがはじまったから、9月の上旬には20曲弱くらいデモが仕上がっていて。なんとかツアーまでに、5曲完成できるように頑張ろうぜってなったんですけど、結局1曲しかできませんでした。それが、「AKABANEの屍」なんです。ツアーでやったからこその説得力が、演奏に生まれてしまったので。聴き返してみても、いいなと思いますね。

──今回、デモの状態からアレンジしていく上で、どういう過程を踏んでいるんですか。

ゲイリー:ひたすらスタジオで、ああでもないこうでもないと迷走しているキーボーディストの横で、「今のやつかっこいい!」「ねえ、今のやつで行こう」「今のやつがいいよ!」って、ひたすらわたしが言っている感じでした。

ユコ:こうしたいなっていうのがある時とない時の差が激しいんです(笑)。ない時は、だいたい音を出しながら、音色もいろいろのせてみたりして。何かないかなっていう感じで探っているんです。それを周りでゲイリーが聴いていて、「今のもう一回弾いて」とか、好きなのがあったら、それを拾ってそこから広げてということが、多いですね。

──デモを具体化していく上では、曲を作ったゲイリーさんの頭のなかでどんな音が欲しいとか、曲のムードなどははっきりとあるんですか。

ゲイリー:僕、大量生産型な代わりに、細部がめちゃめちゃ適当な人で。キーボードのイメージがあまりないままに渡すから、いつもユコさんが困っちゃうんですよ。ベースは、今回はベースラインから曲を作るモードだったんですけど。

──なるほど。各所でテクノ風の雰囲気を感じるのは、そのベースラインやリズムのアプローチによるものかもしれないですね。

ゲイリー:やっぱりドラマーなので、踊れるのが好きなんですよね。Daft Punkばっかり聴いていたのもあるんですけど。

マルガリータ:ベースラインは、今回はデモの段階で入っていたので。ほとんど、忠実な感じなんです。間奏はもう少し動いたほうがいいねとかは、ありましたけどね。あとは、デモ通りな感じです。

ゲイリー:ちょっと今回は、T様がラクしちゃったので、次は苦労してもらおうと思ってます。

ユコ:そうだよね。なんか、ラクしてない? っていうのがあったね。

マルガリータ:前作もだいたいそんな感じだったので。

ゲイリー:そのぶん最近は、ベーシストとして言われたものを弾くっていうことにかけては、超一流ですから。このフレーズをかっこよく弾くのは、俺に任せろっていう。プレイヤーとしては、最近は相当いいので。この次は、もう俺様が考えためちゃめちゃかっこいいベースラインを、俺様が世界でいちばんかっこよく弾くという段階に、到達してくれるそうなので。

マルガリータ:はい、頑張りましょう(笑)。

ゲイリー:そしたら俺、もっと適当なデモでよくなるなと思って。デモ作りがラクになればなるほど、曲も量産できるようになりますしね。

ユコ=カティ

──ゲイリーさんは、やりたいことをどんどん吐き出していくわけですが、その曲をどう色付けたいかは、ユコさんからのアイデアが出た時に、ゲイリーさん自身にもパッとイメージが広がるものがあるんですか。

ゲイリー:僕、自分が思っている以上にモーモールルギャバンというバンドが好きで。

ユコ:気持ち悪っ。

ゲイリー:ユコ=カティから出てくるもの、この人はこれをやりたくてやっていて、これをいいと思ってやっているんだろうなみたいなものを、無条件で愛してしまうところがあるんです。だから、てめえやる気ねえなって音を出されるとイラっとはするし。自分の世界観云々に、じつはそこまで興味がないんだろうなというのがあるんですよね。ただどうしても、作詞とか作曲とか歌は、自分でやらないといけないから、コツコツとカラオケに通って飲み屋通ってと、やってますけど。それ以外のところは、あまり自分が口を出さない方が、結果として俺の好きなものが完成すると思っているので。

──お題を渡して何が返ってくるかが、楽しいと。

ゲイリー:そこは無責任でいいやって割り切っていて。その無責任さってどうなんだろうという迷いは、正直ずっとあったんですけど。アルカラの稲村(太佑)くんの、すごくいいエピソードがあって。アルカラが『ドラゴンボール超』のテーマソング(「炒飯MUSIC」)を作った時、何十秒かの曲を作らないといけないと思っていたのが、締め切り前日にその時間が足りないと気づいて。尺に合わせて曲を伸ばさないといけなくなった時に、フロントマンの稲村くんが「じゃあ寝ます。あとはよろしく」って、メンバーにメールを送って放棄したってエピソードを聞いて大爆笑したんですよね。ああ、俺これでいいやと思って(笑)。

ユコ:いや、よくはないよ?

ゲイリー:それがバンドの説得力だもんっていうことが、すごくよくわかったので。これでいいんだというのを、稲村くんが教えてくれました。

──言い換えれば、メンバーへの信頼感がそれだけ高いということですしね。

ユコ:それだけ聞くと、バンドっていいものですよね(笑)。

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