USヒップホップ主要都市アトランタで今誰がアツい? 現地のヒットチューンを渡辺志保が解説

 さて、次はアトランタのストリップクラブで聴いた最新バンガーを。驚かれるかもしれないですが、アトランタには無数のストリップクラブがあり、男女関係なくエンターテインメントの場として盛り上がっているんです。お昼からオープンしているお店も少なくなく、今回は3軒も訪れてしまいした。アトランタの(そしてアメリカの多くの)ストリップクラブにはDJが駐在しているのが普通でして、ダンサーの女の子はDJがかける曲に合わせて自由に踊ります。そして、地元のラッパーは自分の曲をかけてもらうためにストリップクラブへと営業に出向くんです。実際に、ストリップクラブのステージに立ってライブすることも日常茶飯事。T.Iやフューチャー、グッチ・メインらアトランタの人気ラッパーはみんなストリップクラブから火が付いたと言っても過言ではありません。で、ローカル色がひときわ濃いのもストリップクラブの魅力。先日、ニューヨーク出身のDJの男の子と話した時も彼が「南部のストリップクラブに行くと、常にShazamを使って、フロアでかかってる曲を調べちゃう」と言っていたのですが、全然知らないコアなローカル・ヒットが聴ける場として最高の場所なんです。

Water x Joe Gifted x Fronstreet[Prod By.Tasha Catour]

 前置きが長くなりましたが、そんなアトランタのストリップクラブで知ったのがジョー・ギフテッド(ちなみにgifted=ギフテッド、とは生まれながらに才能がある、という意味です)というラッパーのこの曲。もともとジョー・ガッタ(gutta=何でもして稼ぐギャングスタ、という意味のスラングですね)という名前で活動していた中堅MCのジョーですが、この「Water」がアンダーグラウンド・ヒットを記録し、今後も更なるキャリアの伸びが期待できそう。本楽曲に参加しているのはD4Lのメンバーとしても活動していたフロント・ストリート、そしてプロデューサーはフューチャー率いるFREEBANDZに所属する女性ビートメイカー、ターシャ・ケイター。印象的なフックは、このターシャのペンによるものかも?

 次は、アトランタとウエスト・コーストを股にかけて活躍するアーティストの新譜を。ウィズ・カリファによるレーベル、<Taylor Gang>に所属するトゥキ・カーターが新アルバム『Flowers and Planes』をリリースしました。彼、ラッパーとしてはもちろんですが、アトランタの有名タトゥーショップで働くタトゥー・アーティストとしてもよく知られているんです。本作のジャケットも、鮮やかなコラージュデザインが見事! 今回、アトランタ滞在中に運よくトゥキ本人とクラブでお会いすることが出来ましたが、とても気さく&ナイスな方で、さらにファンになってしまいました。クラブでも多くの方がカジュアルにトゥキに話しかけており、ストリートとの距離の近さがとてもいい感じに見受けられました。肝心の内容ですが、キャッチーなフックと、これまた私が愛してやまないアトランタの若手、ゴー・ドリーマー、そしてローム・フォーチュンのヴァースも小気味いい「To the Max」 や、ウィズ&シェヴィー・ウッズが参加した、ユルめでファンキーなポッセ・カットでもある表題曲、レーベルメイトでもあるジューシー・Jとの酩酊感あふれる「Jerry Maguire」などなど、完成度の高い楽曲が緩急問わずみっちり並んでおり、非常に満足度の高い仕上がりになっています。

 さて、最後に紹介するのは今回のアトランタ旅行最大の目的でもあったフューチャーの話題曲。二週連続でアルバム『FUTURE』と『HNDRXX』を発表し、見事それぞれがビルボード・チャートで首位を獲得するという快挙を成し遂げた彼ですが、現在、全米を廻る『NOBODY SAFE TOUR』をスタートしたばかり。そして、ツアーの開始とほぼ同時に発表したのが、この「Mask Off」のMVです。

Future - Mask Off
Tommy Butler - Prison Song

 トミー・バトラー「Prison Song」からサンプリングしたフルートの上ネタとコーラス部分が非常に強烈な印象を残すこの曲ですが、現時点でビルボードのシングル・チャート最高位5位まで上昇し、フューチャーのキャリア史上最も成功したシングルとなりました。でもって、そのMVの内容もこれまでにないほどの豪勢さ! ハリウッドのアクション映画さながらの映像ですが、フーチャーのお相手役で登場するのはカニエ・ウエストの元カノ、そしてウィズ・カリファの元嫁としても知られるアンバー・ローズ。フューチャーのライブDJとしてもお馴染みのDJエスコもバッチリ登場しているので、ぜひご覧下さいまし。

 以上、とりとめもなくアトランタのホットな楽曲を紹介して参りました! ヒップホップは地域性も濃い音楽ジャンルとして有名ですが、今年、ますますアツさを増すアトランタ産楽曲の数々、皆様にも楽しんで頂けると幸いです。

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
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blockFM「INSIDE OUT」※毎月第1、3月曜日出演 

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