アイドルネッサンスが初オリジナル曲を歌う意味ーー「交感ノート」お披露目ライブを観た

アイルネ、初オリジナル曲を歌う意味

「名曲をまた作ればいいんです。それだけです。きっと楽ではないでしょう。でも、喜びはあるはず。一緒にいい作品を作りましょう」

 オリジナル曲制作発表時、小出がアイドルネッサンスメンバーと会場に集まったファンに向けた、手紙の内容を思い出す。「交感ノート」披露後、新井乃亜は楽曲の制作に多くの人が携わっていることを涙ながらに、言葉を選びながらファンに伝えた。それは、今回の新衣装を見てもそうだ。「17才」の衣装を長袖仕様にした復刻バージョンとも言える今回の衣装は、以前の新井のスカート生地を切り取り、そこに各メンバーの名前を刺繍し、新衣装の左肩に縫い付けている。セットリストを見てもそう。「17才」からはじまるセットリストは、全て音源化された楽曲で固められている。これまでのグループの歩みを認め、確かめながら、新しい一歩を踏み出す覚悟を感じさせた。

 この日、会場入場時にスタッフから「交感ノート」の歌詞カードが配られた。つまり、ファンは「交感ノート」というタイトルと歌詞の内容を知った上で、彼女たちのパフォーマンスを観ることになった。そして、筆者が驚いたのは楽曲披露前に行われた、メンバーによる歌詞の朗読だった。「オリジナル曲の歌詞を共有して、みなさんと私たちで同じ気持ちになって。オリジナル曲初披露の瞬間を迎えたいと、私たちメンバーもみんなそう思って」。新井はそう説明していた。アイドルネッサンスは歌詞の世界観を重んじるイメージがある。3月4日に新宿ReNYで行ったレギュラー公演『アイドルネッサンスを届けるネッサンス!!』では、KANの「REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~」による歌詞の世界観を演劇にして表現もしていた。

 楽曲に抱くイメージは、人それぞれに違う。それは、ライブやCDジャケット、MVによってだんだんと塗り固められていく。ここまで書いておきながら言うのも何だが、「交感ノート」の印象を語ることには、少し憚る気持ちもある。そう思ってしまうほどに、メンバーによる朗読の時間はオリジナル曲の歌詞を共有するという、最初で最後の尊い時間だった。まさにそれが“交感”するということであったからだ。これから、それぞれが思い思いの「交感ノート」を育てていくこと、そしてこれから彼女たちと「交感ノート」の物語が始まる。

 ライブの最後には、「交感ノート」のほかにも小出がアイドルネッサンスへ3曲のオリジナル曲を制作していることが発表された。小出の溢れるバイタリティーには驚くばかりだが、彼女たちの思いを真正面から受け止めた誠実さには感銘を覚える。アイドルネッサンスは「交感ノート」と共に新たなスタートを切った。季節はもうじき初夏を迎え、またアイドルネッサンスの熱い夏がやってくる。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■セットリスト
1.17才
2.YOU
3.べステンダンク
4.初恋
5.太陽と心臓
6.交感ノート
7.Funny Bunny
8.君の知らない物語
9.夏の決心
10.Music Lovers
11.ドカン行進曲(己編)
12.ガリレオのショーケース
13.シルエット
14.交感ノート

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