伊藤賢治&古代祐三&山岡晃、ゲーム音楽の巨匠3人が明かす『パズドラクロス』サントラ制作秘話

ゲーム音楽の巨匠3人が明かす“制作論”

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「クリエイターがゲーム音楽として作ってしまうと、ゲーム音楽以上の価値は生まれない」(山岡)

ーーちなみに「ラストバトル ~光と闇のシンフォニー」はどのような経緯で制作されたのでしょうか。

尾崎:せっかく3人お集まりいただいたので、共作できたらいいよねと思いついたのでお願いさせていただきました。

伊藤:僕からしたら「マジですか!」という気持ちでしたよ。あの古代さん、そして山岡さんも加わって共作をやっていただけるのか! と。

ーー普段のイトケンさん・山岡さん楽曲ではないようなバスドラムの強さが新鮮でした。

古代:バスドラムはやや強めに出しましたね。Nintendo 3DSの特性としてベースが聴こえづらいので、低音で引っかかりを作るならバスドラムだろうと。

尾崎:この曲は山岡さんにギターを弾いていただいたのですが、大変そうでしたね……。

山岡:大変でしたねえ……弾けない譜面が来たんだから(笑)。

伊藤:誰ですか! そんなフレーズを考えたのは!

(一同爆笑)

伊藤:そうさせるつもりはなかったんですけどねえ……(笑)。

ーーお三方がゲーム音楽を作る上で信条としているものはありますか?

山岡:劇伴もゲーム音楽もポップスも、音を伝達する方法は変えていないつもりです。クリエイターがゲーム音楽として作ってしまうと、ゲーム音楽以上の価値は生まれないのかなと。僕自身としてはその風潮を変えたいと思っているし、ゲーム音楽というジャンルで言われていることって、結局「ゲームを遊んでいるひとの体験」というか、記憶装置的に機能しているし、体験が紐づくものだと思うんですよね。

古代:私の場合はゲームありきというか、ここ10年くらいはディレクターサイドの意向を汲むように徹底しています。例えばレースゲームだと、コースを1周する時間というのはコインを入れてから3分なら3分と決まっているんですよ。そのなかで音楽をきちんと解決しなければいけないし、プレイヤーをノせるなら前置きも少なくしたほうがいい。アクセルを踏んだ瞬間からテンションを上げてもらわないと。RPGだと、レベルが上がってくると初手や二手目で戦闘が終わるので、なるべく冒頭に盛り上がりを持ってくるようにしたいんです。ピークをどこに置くかはゲームの内容を見てから決めますね。あとは、ゲームにおいて何が重要かによって自分の肩の力を抜いたりします。RPGなら戦闘曲とフィールド・ダンジョン曲が一番聴かれるので時間を掛けますね。一回作って次の日にまた聴いたり。頭が完全にクリアになった状態で聴いて、グッとこなかったらボツにするんです。

伊藤:意外かもしれないですけど、僕は自分の作った曲をゲーム音楽として捉えていないんです。リリースした結果そうなっただけなので、どう取られても通用するクオリティをもたせているつもりです。ハードに対しての変化も、自分の楽曲においてはそこまでないですね。アレンジに関しては、ゲーム機の性能を考慮して少し変わったりはしますが。そのうえで『パズドラ』は制作者である山本プロデューサーの考えやポリシーをこちらが汲み取ってどう音楽として提供するかを考えています。『パズドラ』自体、低年齢層のユーザーが多いので、子供たちにそれをどうわかりやすく伝え、大人になったときにわかっていくことがあるか、というのはテクニカルに仕掛けを作っていることもありますね。『パズドラ』は他のタイトル以上に、その使命感に駆られるんです。だからバトル曲が多いのかもしれないんですけど(笑)。

ーー「使命感」というのは、具体的にはどのようなものでしょうか。

伊藤:子供たちや若い世代に希望を持たせるような、次に繋げる未来を感じさせられる要素、ですかね。音楽でその部分が表現できればいいなと、当初から考えていました。

尾崎:僕も昔からゲームが好きで、自分でゲームの曲を弾くのも好きだったんです。メジャーなタイトルであればあるほど、口ずさめたり記憶に残るような楽曲を多く残したいと思うようになりました。

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「聴き手の中に音楽を作っている人がいるのなら、僕の音楽で遊んでほしい」(伊藤)

ーーそれぞれが今作の中で「ここに工夫を凝らしました」というポイントは?

山岡:工夫、ないんですよね……。

尾崎:でも、『サイレントヒル』や『LET IT DIE』には入らない曲が多かったですよね。

山岡:少し話が脱線しますけど、最近の音楽って、受け手の100点と作り手の100点がズレている気がしていて。10年〜20年前は、作り手の100点に聴き手が寄せていっていたというか。極端なことを言うと、「音楽を作るのは人間じゃなくていい、AIになってもいいんじゃないか」とすら思っているくらいで。昨年、AIによる”人工知能小説”が、『星新一賞』の一次通過者になったというニュースがあったじゃないですか。経験と技術を持っているから作れる部分があるけど、完全にシチュエーションやゲームのジャンルに応じてマーケティングされたものが出てくるのもいいのかなって。だからと言うわけではないですが、僕は受け手の100点に寄り添ったものを作ろうかなと思ってやっています。

伊藤:僕はほとんどアレンジを別の方にお願いして、いろんな色に染めていただいたんです。だから自分の曲なんですけど「こういう解釈もあったのか」と気づけて、今後の参考にもなりました。今まで見えなかった自分自身がわかったというか。まあ、これもAIなんですけどね(笑)。

(一同爆笑)

古代:まず、今回初めて依頼をいただいたこともあり、絶対大きく外すことはやらないし、そのうえでイトケンさんから預かった曲を壊さないことが自分の中での最終目標でした。かつ、作品にまとまりを出すにあたって、それぞれの印象がバラけてしまうのはよくないと思ったので、「録音は生楽器で統一しましょう」と提案しました。自分が手がける楽曲も、なるべく手グセが出ないようにしたり。低年齢層が遊ぶと言うこともあり、オーソドックスなアレンジを徹底しました。

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ーー3人の曲は低年齢層だけではなく、ファミコン世代でゲームを未プレイのユーザーも、楽曲を聴いて「ゲームをやってみたい!」と思わせる何かがあるように思えます。そういうことも含めて、本楽曲をどんなふうに楽しんでもらいたいですか?

山岡:これだけゲーム音楽を長くやって、ゲームについて四六時中考えているメンバーなので、「音楽でストーリーを作る」というのは共通している部分かもしれません。いろんな音によるストーリーが浮かんできたり、他の音楽にはない展開ーー「頭の中でアニメーションが流れる」と思ってもらえたら嬉しいですよね。

古代:小学生くらいのお子さんとその両親の心に残る、安心してくれるような曲になっていたら良いなと思います。そういう気持ちを込めてアレンジをしているところもあるので。

伊藤:プレイヤーに限らず、聴き手の中に音楽を作っている人がいるのなら、僕の音楽で遊んでほしいんですよね。もちろん著作権などいろいろと難しい問題がありますし、許容される範囲内にしてほしいのですが、そういう二次創作を見ると、自分が見えなかった部分が見えてきますし、昔だったらカバーをしてくれるような感覚でしょうから。近い将来、一緒に仕事をする相手がそこにいるかもしれませんし、僕はすべてチェックしていますよ(笑)。

(取材・文=中村拓海/写真=竹内洋平)

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『パズドラクロス 神の章/龍の章』オリジナル・サウンドトラック

■リリース情報
ニンテンドー3DS用ソフト『パズドラクロス 神の章/龍の章』オリジナル・サウンドトラック
発売:2017年2月8日(水)
音楽:伊藤賢治・古代祐三・山岡晃
価格:(CD2枚組) ¥2,500+税
※初回限定封入特典:二次元バーコード封入
(ダウンロード特典:『パズドラクロス 神の章/龍の章』
オリジナル PC&スマホ壁紙)
(C)GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.

日本コロムビア『パズドラクロス 神の章/龍の章』CD 情報サイト
日本コロムビア『パズドラクロス 神の章/龍の章』CD特設サイト

■イベント情報
『ガンホーフェスティバル2017 全国ツアー』にて 「パズドラクロス 神の章/龍の章」オリジナルサウンドトラック 販売中
『ガンホーフェスティバル2017 全国ツアー』
【開催日程】
2017年3月26日(日) イオンモール名取 <終了>
2017年4月 2日(日) イオンモール福岡 <終了>
2017年4月 9日(日) イオンモール岡山
2017年4月16日(日) イオンレイクタウンkaze
2017年4月23日(日) サッポロファクトリー
2017年4月30日(日) イオンモール常滑
2017年5月 7日(日) イオンモール新小松
2017年5月14日(日) イオンモール京都桂川
2017年5月28日(日) 幕張メッセ(千葉)

https://event.gungho.jp/fes/2017/

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