TM NETWORK「Get Wild」が音楽シーンに残した功績とは? 今なお革新的な楽曲の力を考察

TM「Get Wild」が残した功績

 4月5日にリリースされる「GET WILD」30周年記念企画盤『GET WILD SONG MAFIA』は、他アーティストによるカバーバージョンも含めて同一曲を36曲も収録するという規格外の内容。何も知らない人が聞いたら冗談かと思うような大ボリュームだが、いかにこの楽曲が愛されていたかを思えば全く不思議ではないし(実際、2004年にも限定ボックスセットの1枚として同コンセプトの作品が収められている)、TM NETWORKを再評価する上でも大事な作品である。

 ディスク1は原曲の「Get Wild」で幕を開け、“FANKS CRY-MAX” Versionがそれに続く。これは1987年6月に行われたTM初の日本武道館公演『TM NETWORK FANKS CRY-MAX』のオープニングナンバーで、シングル発売から2カ月しか経っていないにも関わらず、すでに大胆にアレンジされた状態で披露されている。個人的にはサンプリングボイスをパーカッシブに多用するこのバージョンが一番好きだ。

 その他にも、ハードロックに傾倒していたTMN初期のバージョンから、2015年に行われた結成30周年記念ライブで披露された超ロングバージョンまで、実に様々なライブバージョンに触れることが出来る。

 驚くべきは宇都宮のボーカルだ。リリースから30年が経過した今でも声の瑞々しさが全く失われていない。楽曲の力はもちろんだが、長きにわたりフロントに立ち続けている彼のボーカルなくしてこの企画は当然成り立たないのである。

 カバーとリミックスを収めたディスク4も重要な1枚。なかでも、FANKSのみならず多くのテクノファンの注目を集めるのは石野卓球によるリミックスだろう。実は彼にとってTMとの仕事は2度目。最初は1991年にリリースされたTMNのシングル『RHYTHM RED BEAT BLACK (Version 2.0)』のカップリング曲として、表題曲のカバーを電気グルーヴとして提供しているのだ(しかもメジャーデビュー前!)。かなりふざけた仕上がりになっているので(トラックは格好良い)、気になる人はチェックしてみてほしい。これをきっかけに電気ファンになったというFANKSも多いはずだ。それにしても、あの当時から電気グルーヴを高く評価していた小室のセンスには感服するほかない。

 話は逸れたが、卓球氏による「Get Wild」リミックスは、「Latino Acid Remix」というタイトルにもある通り、原曲にはないラテンの要素を加えつつもクールでアシッドな仕上がり。彼の最新作『LUNATIQUE』が好きな人にはたまらないサウンドだ。しかも、小室による最新リミックスから繋がっていく流れに両者のファンとしては胸が熱くなる。

 かつて、ダンスミュージックとロックとポップスを融合した最先端の音楽のひとつとして現れた「Get Wild」は、時代を経ることにより身近で親しみやすい楽曲として、当時よりも広く愛されるようになった。楽曲がバンドの手を離れ、勝手に成長していく様は見ていて楽しいもの。レーベルやジャンルの垣根を超えて実現した『GET WILD SONG MAFIA』は、TM NETWORKと「Get Wild」を愛する人々の情熱の結晶なのである。

■阿刀 "DA" 大志
75年生まれ。PIZZA OF DEATHにて宣伝制作を10年以上務めた後、12年からフリーランスに。現在は執筆業を中心に、プロモーター、音楽専門学校講師など、音楽に関わるあらゆる分野で雑食的に活動中。

■リリース情報
『GET WILD SONG MAFIA』
発売:2017年4月5日
価格:¥3,000(税抜)
形態:4CDアルバム
収録曲数:36曲
<収録予定曲>
・Get Wild(1987/4/8)
・Get Wild(“FANKS CRY-MAX”Version)(1987/6/24 日本武道館)
・GET WILD '89(1989/4/15)
・Get Wild(“COLOSSEUM I”Version)(1989/8/29 横浜アリーナ)
・Get Wild(“RHYTHM RED TMN TOUR”Version)(1991/2/22 仙台イズミティ]
・Get Wild(“tour TMN EXPO ARENA FINAL”Version)(1992/4/12 横浜アリーナ)
・Get Wild(techno overdub mix)(1993/8/21)
・GET WILD '89(“TMN final live LAST GROOVE 5.18” Version)(1994/5/18 東京ドーム)
・GET WILD DECADE RUN(1999/7/22)
・GET WILD(LIVE EPIC25 ver)(2003/8/20)
・Get Wild(Double Decade 2004/4 横浜アリーナ)
・Get Wild(Double Decade 2004/6/24 日本武道館)
・Get Wild(REMASTER version)(2007 日本武道館)
・Get Wild(Incbation Period version)(2012/4/25 日本武道館)
・Get Wild(FINAL MISSION -START investigation- version)(2013/7/21 さいたまSS)
・Get Wild 2014(2014/4/22)
・Get Wild(the beginning of the end version)
・Get Wild(QUIT30 HUGE DATA version)
・Get Wild(30th FINAL version)
・Get Wild 2015 -HUGE DATA-(2015/3/21)
・GET WILD / Takkyu Ishino Latino Acid Remix (2017 avex trax)
他「GET WILD」カバー楽曲、リミックス楽曲収録予定

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