『カルテット』でも発揮された、椎名林檎のプロデュース力 “大人の女性”の魅力を引き出す手腕

 「演じる」というのは、椎名林檎自身にも通ずることだろう。デビュー当初は「本能」のMVでナース服を着ていた。その後もロリータ風の少女(『勝訴ストリップ』)、花魁(『逆輸入~港湾局~』)、マリリン・モンローを彷彿とさせる金髪で巻き髪のピンナップガール(『日出処』)と、リリースの度に衣装も髪型もメイクも大胆に変えながら、様々なイメージを装い、ありとあらゆる女性の姿に扮してきた。その発想の豊かさやクリエイティビティは、プロデュースワークにも表れており、柴咲コウ『野性の同盟』や、林原めぐみ『今際の死神』では、作詞作曲や歌のディレクション等の他に、アートワーク等のビジュアル面も手がけている。そのプロデュースの矛先が自身に向くにせよ、他者に向くにせよ、椎名林檎の表現にとって、「女性」という性は、重要なテーマとなり得る。そのプロデューサー的な資質で、これからも様々なキャリアを持つシンガーとともに、独自の“魅せ方”を追求した良質な音楽を聴かせてほしい。

(文=若田悠希)

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