SKY-HIが“ファン運用Twitterアカウント”を立ち上げた理由「『物議を醸す』ことを大事にしたい」

SKY-HIの考える“情報の届け方”

「波風立たないことを良しとする風潮には異論を呈したい」

ーーここまでお話を伺って、SKY-HIさん自身はこの盛り上がりを心から楽しんでいるなと見受けられるのですが、実際のところはどうですか?

SKY-HI:友人かつ一番尊敬しているアーティストである、HAMMER DA HUSTLERという男がいるんですが、彼が「アートというのは作品そのものに言われる言葉じゃなくて、作品が出たことによって本人も想像していない何かが行われることがアートなんだ。ピカソも、自分が死んでからこうなるなんて想像してなかっただろうし」と言っていて、感銘を受けたことがあるんです。日本の人たちの優しさは美徳みたいなところもあるんですけど、一方で「物議醸さねーなー!」とモヤモヤすることが多くて(笑)。

ーー「アート」というか「世間への問いかけ」に対して打ち返して来る人が少ないということに寂しさを感じている部分もあるわけですね。

SKY-HI:俺自身は「物議を醸す」というのを大事にしたいし、そうなったときに面白がる気持ちは忘れたくないんですよ。波風立たないことを良しとする風潮には異論を呈したい。SNSを見ていて、芸能人アカウントが“自撮り上げBot”みたいになっていることに対して、一度も面白いと思えたことはないし、だったらカニエ・ウェストがいきなり借金まみれなことを告白したり、クリス・ブラウンがいきなり誰かに喧嘩をふっかけたり、ドナルド・トランプをSNS上でおかしく揶揄するほうが面白いし、自分は後者の側でいたい。

ーーなるほど。ちなみに日本だとその「面白がれる人」は誰に当たるんでしょうか。

SKY-HI:そこが上手いのはキングコングの西野亮廣さんであり、HKT48の指原莉乃さんのような人なのかもしれないですね。物議を醸して仕事に繋げていく辺り。その人たちのような存在を無視して、無難なことをただただやっていくというのが日本の芸能界の正しいあり方なんだとしたら、俺は絶対芸能人だけにはなりたくない。そもそも自分が「アイドルやりながら夜はラッパーしているのはすごいね」と言われることに対して、何がすごいのかよくわからなかったですし。きっと芸能人は「夜に泥酔してオープンマイクでずっとフリースタイルをしない」とか「1500円払ってバトルにエントリーしない」みたいな先入観があるからそう思われるわけなので。少し話は変わるんだけど、一方で「売れてるやつらは性格が悪い」という極論というか暴論みたいなことも常識のように噂されていますが、あながち間違っちゃいないとは思うんです。裏表とか、生き馬の目を抜くような物を見ることもあるし。そういうのじかに見ちゃうと辛い気持ちになることもあるけど、それって彼らが「自衛のためにそうしなきゃいけなかった」という部分もあると思うんですよ。

ーー「そうしなきゃいけなくなった」理由とは。

SKY-HI:日本の芸能界もそれに付随する音楽もガラパゴスになっていって、芸能人は体制に従うしかなかったり、無駄に競争意識を煽られて周りを信用しづらくなったりして、自撮り上げbotになって目の前のニーズを取りに行くしかなくなったからだと思うんです。需要があって供給があるものだからそれはそれで良いと思いますけど、ただ無難なものには自分自身は面白がれないんですよ。ただ、アナーキーなら良いってもんじゃないし、アイドルで、自撮り一つで物議醸したりムーブメントまで持っていく人もいるから一概には言えないけど。

ーー今回のようにトリッキーな手段を使うこともそうですが、近年はサブスクリプションサービスの勃興やクラウドファンディングプロジェクトの広がりなど、Web上における音楽を取り巻く状況が変化しているように思えます。SKY-HIさんはこの流れをどのように感じていますか?

SKY-HI:遠距離恋愛じゃなくなるというか、距離がゼロに近くなったと感じますね。チームも作りやすくなっているし、それが大きな規模になることも増えてきましたから。俺が関わっているわけではないですが、客観的にすごいなと思ったの「ニコラップ」の文化圏ですね。ニコニコ動画のコミュニティ内でビートメイカーを探して連絡を取って、そこで製作が完結するし、そこからぼくのりりっくのぼうよみくんみたいなスターが出てくる。自分がMy Spaceを使っていた頃の空気感を、さらにアップデートしたものを見ている感じがします。

 クラウドファンディングに関しては、2000年代後半にスタッフと「ファンクラブをプラチナ・ゴールド・シルバーとグラデーションをつけて、月額いくらなら月に1曲新曲が届く」みたいなシステムはどうなのかと、クラウドファンディングのリターンにも似た構造について話し合ったことがあるんです。そのときCDの売り上げだけに頼れなくなる時代が来るのかもという予感もあったし、特にAAAは芸能界に近いところにいるから、グループも積極的に新曲が求められるというよりは、その付随物も含めて一つのパッケージにするべきじゃないかと。まあ、結局その当時とスタッフが変わって、話が流れちゃったんですけど。

ーーその段階で先を見据えて計画を立てていたんですね。

SKY-HI:あと、せっかくの機会なので話しておくと、クラウドファンディングについて、僕は清潔なものだと思っているんです。というより、具体的なお金の話をすることに対して「不潔だ」と煽る空気が、逆に不潔に感じるというか。煽っておいて裏で「あの取り分がどう」とか言ってるほうがナンセンスだと思うし。あとは使う人々の耐性ができてくれば、芸能界的ではない明朗なものを望む人たちにとっては、一つの便利な選択肢になるかもしれない。

ーーSKY-HIさんはその「明朗なものを望む人たち」側の人だということですね。

SKY-HI:俺、リアルじゃないものが苦手なんです。ライブで「夢を見させる」と言ってる人も苦手で。俺は「俺のライブを見る前の現実よりも、ライブを見た後の現実のほうが楽しい」と思ってもらいたいし、「次のライブまで頑張ろう」じゃなくて「あのライブ見たから生活が頑張れるわ」と感じてもらえるよう心がけてます。夢はいつか醒めるけど、現実はずっと続いていくから。それを少しでもいい方向に持っていく、人生に深く携わる覚悟と責任を持ちたい。

ーーなるほど。ライブの話が出たのでそこも掘り下げたいのですが、現在はツアー中で武道館公演も近づいて来ましたし、5月には『VIVA LA ROCK』への出演も決まっているそうですね。SKY-HIとしてはフェスとワンマンのステージングをどう使い分けているのでしょうか。

SKY-HI:音楽のメッセージ的な側面と享楽性についてよく考えるんですが、フェスのステージに上がるときには、享楽性をいかに高めるかを大事にしているというのが現状です。メッセージは「一つ」渡せれば、という感じで。そして、ツアーの2時間半〜45分で行なうステージは、さらに享楽性を高くしているんです。なぜかというと、その先にしかメッセージを渡せる精神状況は来ないから。楽しみ切った状況じゃないと渡しきれないメッセージというのは間違いなくあるし、ディズニー映画なんてまさにその極地だと思うんです。だから、細部まで凝った仕掛けと畳み掛けるような瞬間からじっくり観る瞬間、と、エンターテインからメッセージ、全てを伴ったライブの流れにはとことん拘ります。あと、「リスナーがトラップにノレない問題」みたいな空気は感じるからフェスではあまりトライしないんですけど、ワンマンだと演奏し続けていて、ウチのお客さんは次第にトラップに乗れるようになってきました。

ーーダンスミュージック畑のリスナーとロック界隈だと、トラップに対する耐性も全然違いますしね。

SKY-HI:スマホで音楽を聴いても、ビートの細かいところは聴こえないんですけど、ライブの場所ではしっかり鳴ってくれるから、そこに慣れればしっかりとノってくれるようになるし、ドラムにはそういう力があると思うんです。一時期「J-POPリスナーはドラムを聴いてないんじゃないか」と悩むこともあったけど、今はしっかりドラムに拘って届け続けたいと覚悟を決めれるようになりました。

ーーあと、SKY-HIさんのライブに関しては、ダンサーとバンドを含む編成・SUPER FLYERSとの掛け合いも魅力の一つですが、ツアーやフェスを通してさらに成長しているという手応えはありますか?

SKY-HI:ここ3年で、1DJの時にクイックで曲を次々繋げるような形を、フルバンドで成立させるための方法を作り上げてきたんです。だからフェスにセットリストを出すと「時間オーバーする気満々でしょ」と言われるくらいの曲数になるんですけど、毎回ちゃんと収まっててびっくりされます(笑)。最近はベースミュージックとバンドの共存ーーシーケンスの混ざりを解決して、ヒップホップとベースミュージックが続いても不自然にならない独特な音像を作り上げることができたという手応えも生まれてきました。俺はジェームズ・ブラウンにおけるThe J.B.'sや、プリンスにおけるThe Revolution、ジャスティン・ティンバーレイクにおけるthe Tennessee Kidsのようなものを手に入れることが出来ました。人間的な部分でもすごく支えられているし。次のシングルはSUPER FLYERSと一緒に作っているので、より凄いものを作れている手応えがあります。

(取材・文=中村拓海)

「SKY-HI(日高光啓)オフィシャルブログ「SKY'sTHE LIMIT」Powered by Ameba」 ーファンの、ファンによる、ファンの為のツイッターアカウント始めました。

■リリース情報
『OLIVE』
発売:1月18日(水)
【Music Video盤】(AL+DVD) ¥3,700(税抜)
Disc-1[CD]
1.リインカーネーション
2.BIG PARADE
3.Double Down
4.Stray Cat
5.十七歳
6.明日晴れたら
7.アドベンチャー
8.Walking on Water
9.How Much??
10.創始創愛
11.Over the Moon
12.クロノグラフ
13.ナナイロホリデー
Disc-2[DVD]
1.クロノグラフ -Music Video-
2.クロノグラフ -SKY-HI×高野苺-
3.ナナイロホリデー -Music Video-
4.Double Down -Music Video-
5.アドベンチャー -Music Video-
6.アドベンチャー -Making-

【Music Video盤】(AL+DVD) ¥5,800(税抜)
Disc-1[CD] 収録内容MV盤同様
Disc-2[DVD]
SKY-HI HALL TOUR 2016 ~Ms. Libertyを探せ~ライブ映像 @2016/3/13 TOKYO DOME CITY HALL)

【CD盤】(AL) ¥3,000(税抜)
Disc-1[CD] 収録内容MV盤同様

『SKY-HI HALL TOUR 2017 ~WELIVE~』
3月4日(土) 新潟・新潟県民会館大ホール
3月10日(金) 群馬・ベイシア文化ホール大ホール
3月18日(土) 愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
3月25日(土) 宮城・仙台イズミティ21大ホール
3月26日(日) 青森・リンクモア平安閣市民ホール(青森市民ホール)
3月30日(木) 大阪・フェスティバルホール
3月31日(金) 大阪・フェスティバルホール
4月2日(日) 広島・上野学園ホール
4月8日(土) 福井・福井市フェニックスプラザ大ホール
4月14日(金) 愛媛・松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール
4月16日(日) 島根・島根県民会館 大ホール
4月22日(土) 鹿児島・鹿児島市民文化ホール
4月23日(日) 福岡・福岡市民会館大ホール
5月2日(火) 東京・日本武道館
5月3日(水) 東京・日本武道館

SKY-HIオフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる