第59回グラミー賞、ビヨンセ対アデルの行方は? 渡辺志保に訊く授賞式への期待

 昨年度は、テイラー・スウィフトが最優秀アルバム賞を受賞し、全体的にもポップなラインナップとなったが、今年はまた違った展開になりそうだ。また、テイラー・スウィフト関連では、カニエ・ウエストのある楽曲にも注目したいという。

「最優秀ラップ・ソングには、カニエ・ウエストの『Famous』がノミネートされています。この曲は、テイラーを“ビッチ”と呼んで炎上し、テイラー側も抗議に出ました。しかし、その後カニエの妻キム・カーダシアンが、実はテイラーには許可を得ていると暴露したことで、今テイラーへの風当たりが強くなっている。昨年テイラーを支持したグラミー賞が、今年はこの曲を選ぶとなると面白いことになりそうです(笑)。また、去年の秋頃にカニエは精神的な問題もあって入院しました。それ以来公の場には出ていないため、復活後初ステージとしてグラミーでお騒がせなことをしてほしいという期待もあります」

 近年のアメリカのポップミュージック・シーンでは、傑出した作品性とプライベートに直結した話題性でリスナーを楽しませる作品が数多く生まれている。主要4部門に限らず、カニエ・ウエストの「Famous」の行方を追うのも、楽しみ方のひとつかもしれない。最後に、同氏は授賞式でのパフォーマンスについて、こう期待を述べた。

「ビヨンセとアデルは、ユーモアのわかる女性同士、この対決をどうネタにしてくるのか気になりますし、リアーナも話題になるようなぶっとんだ格好をしてほしいですね(笑)。アーティスト同士のコラボレーションやハプニングもグラミー賞の醍醐味です。また、司会者のジェームス・コーデンは、テレビ番組内の企画『カープール・カラオケ』で一躍有名になりました。彼がタクシーの運転手になり、助手席にアーティストを乗せカラオケをするのですが、アーティストの素の表情が出ていると評判が高いんです。授賞式でも、ジョークや風刺を利かせながら巧みなおしゃべりを聞かせてくれるはず。といったように、様々な見所がありますが、今回はやはりトランプ政権がはじまって世界中が不安に思う中でのグラミー賞。今だからこそ、音楽のエンパワメントを示し、ポジティブな何かをもたらすパフォーマンスを見せてほしいと思います」

 グラミー賞授賞式は、世界中で何千万人が同時に視聴する音楽界最大のショーだからこそ、そのステージには大きな期待が寄せられる。アメリカをはじめ世界の近年の潮流や情勢を考えると、今年はさらに、音楽というエンターテインメントがその力を発揮し、大きなインパクトと感動を残すパフォーマンスを見ることができそうだ。

(取材・文=若田悠希)

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