柴 那典が選ぶ2016年洋楽ベスト10 ポップ・ミュージックの“基準”が変わったシーン総括

 というわけで、ここまでは状況論。ここから先は僕の“好み”の話。

 なんだかんだ言って、僕が好きなのは、音楽に含有されるセンチメントやメロウネスの成分なのです。ドライで乾いていて尖っている音楽を聴いて「おー、エッジィだ、すげえ」と思うことはあるけれど、振り返ると、あんまり愛聴することはない。それよりも、エレクトロニックな音色にある種のウェットさを忍ばせるアーティストのほうが、やっぱり好み。

 そういう意味でセレクトしたのがPorter Robinson & Madeon「Shelter」で、その並びで選んだのが、Japanese WallpaperとThe Japanese House。

 Japanese Wallpaperは、メルボルンをベースに活動する現在19歳のマルチ・インストゥルメンタリスト、ギャブ・ストラムによるソロ・プロジェクト。The Japanese Houseはロンドン在住の、やはり現在21歳の女性プロデューサー、アンバー・ベインのソロ・プロジェクト。全然違う地域で育った同世代が、偶然似たような名前をつけて相通じるような音楽性で活動しているの、かなり気になるところだ。

 というわけで、TOP10をリスト化してみたら、結局キュレーション原稿で取り上げた作品が10枚中8枚になりました。

TOP10で取り上げた作品のキュレーション原稿

Francis and the lights『Farewell, Starlite!』
Porter Robinson & Madeon『Shelter』
Frank Ocean『Blonde』
Bon Iver『22, A Million』
ANOHNI『Hopelessness』
Japanese Wallpaper『Japanese Wallpaper』
Beyonce『Lemonade』
The Japanese House『Swim Against the Tide』

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。

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