さユり、新曲「フラレガイガール」が転機作である理由 名曲「ミカヅキ」からの流れを紐解く

さユり新曲が転機作である理由

 筆者がライブで「フラレガイガール」を一聴し、彷彿としたのはさユりのデビュー曲「ミカヅキ」であった。野田のコメントに出てくる“さユり氏から頂いたCD”であり、プロデュースをするきっかけにもなったさユりのデビューシングルでもある。<当の私は 出来損ないでどうしようも無くて>、頭上に浮かぶ綺麗な満月は“世界”を照らし、自身は欠けた“ミカヅキ”だと歌う。さユり自身が作詞・作曲を手掛けたこの曲は、劣等感や不完全な自分を映し出しながら、<欠けた翼で飛ぶよ 醜い星の子ミカヅキ 光を放ったミカヅキ><今宵も頭上では 綺麗な満月がキラキラ 次は君の番だと笑っている>と前に進みたい、自分を信じたいという希望に満ちた歌詞で終える。

さユり「ミカヅキ」

 野田が「ミカヅキ」を聴いたことが、さユりへの楽曲提供に繋がった、と序盤にて記したが彼がさユりに対して「やっと見つけた、この人だ」と思ったのは、2曲の親和性の高さを考慮すると必然だったように思う。「ミカヅキ」は全てのサビ頭が「それでも」のフレーズから始まる。<それでも 誰かに見つけて欲しくて><それでも あなたとおんなじ景色が また見たいから>。さユりは、過去に後悔し、藻掻きながらも、“それでも”と自問自答し前に進んできた。

 過去を肯定し“それでも”と進む思いは、さユりを突き動かす原動力のようなものだ。「フラレガイガール」の終わりは、野田が完成させた歌詞からさユりとの話によって、光や未来に向かっていく歌詞へと変わっていったという(『ダ・ヴィンチ2017年1月号』(株式会社KADOKAWA)より)。ここに後悔だけでは終わらない、さユりのシンガーソングライターとしての本質があるように思う。

 冒頭、「フラレガイガール」が彼女にとって転機となる楽曲と書いたが、すでにさユりは次のフェーズに突入している。新曲「平行線」は、フジテレビ”ノイタミナ”で2017年1月12日から放送開始のTVアニメ『クズの本懐』エンディング・テーマのために書き下ろした楽曲だ。発表時のさユりのコメントには、すでに“それでも”という思いが溢れている。「フラレガイガール」でさユりを知ったファンは、「ミカヅキ」はもちろん、次の「平行線」でも彼女の繊細で強い思いに胸を打たれるはずだ。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■リリース情報
さユり4thシングル『フラレガイガール』
初回生産限定盤 A:CD+DVD
価格:¥1481+税
<収録曲>
1.フラレガイガール
2.アノニマス
3.プルースト-弾き語りver.-
4.ルラ

<DVD収録内容>
渋谷WWWワンマンライブ「ミカヅキの航海」ライブダイジェスト映像(2016/04/23)
封入特典:酸欠少女さユりキャラカード(4種の中から1種ランダム封入)
デジパック仕様

初回生産限定盤 B:CD+DVD
価格:¥1481+税
<収録曲>
1.フラレガイガール
2.アノニマス
3.ニーチェと君-弾き語りver.-

<DVD収録内容>
アノニマスMV(フルレングスver.)
封入特典:酸欠少女さユりキャラカード(4種の中から1種ランダム封入)
デジパック仕様

通常盤:CD
価格:¥926+税
<収録曲>
1.フラレガイガール
2.アノニマス
3.アノニマス-酸欠remix-
初回仕様限定封入特典:酸欠少女さユりキャラカード(4種の中から1種ランダム封入)

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