中島美嘉が語る、デビュー15周年を超えた“現在地”「曲ごとに主人公を変えながら歌ってる」

中島美嘉、デビュー15周年を超えた“現在地”

「映画に出てくるすべての人の立場がよくわかる」

ーー『ボクの妻と結婚してください。』は、余命半年と宣告された男性が、妻と息子のために自分がいなくなった後の夫を探すというストーリーですが、この男性についてはどんなふうに思いますか?

中島:すごく気持ちはわかりますね。主人公の男性だけではなくて、映画に出てくるすべての人の立場がよくわかるなって。

ーーすべての登場人物に感情移入できる、と。その大きな視点は「Forget Me Not」の表現にも反映されていると思います。早くライブでも聴きたいですね。

中島:うーん、歌いたいたいけど、あまり歌いたくない気持ちも…。

ーーえっ?

中島:いや(笑)、難しいんですよ、この曲。歌で始まるし、すごく緊張するんです。「花束」や「ORION」もそうですけど、歌で始まる曲をライブで歌うときは、イントロを付けてもらうんですよ。自分の曲だから(歌い出しの)キーは覚えてるんだけど、緊張すると「あれ? どこだっけ?」って音が分からなくなることもあって。だから伸さん(中島美嘉のバンドマスターをつとめる河野伸)に「イントロ付けて」って(笑)。

ーー歌で始まる曲が多いのは、作曲家の方が「まず声を聴かせたい」と思うからでしょうね。自分の声、好きになってきました?

中島:そうですね。声の使い方、使い分けがわかってきたので。優しく歌うこともあるし、その逆で歌うこともあるし。そうやってビックリさせるのもおもしろくなってきたんですよね。

ーービックリさせる?

中島:そう。それもアコースティック・ライブが楽しかったからだと思うんですけど、優しく、ふんわり歌った後に、「蜘蛛の糸」をめっちゃ怖く歌ったり(笑)。主人公をどんどん変えながら歌うのがおもしろいんですよ。

ーードSな歌声もありますからね、中島さん。シングルのカップリングにはSALUさんをフィーチャーした「ビルカゼスイミングスクール feat. SALU」を収録。ヒップホップ・アーティストとのコラボレーションは初めてですよね?

中島:スタッフの提案だったんですよね。私、コラボレーションが得意ではないので、いままではオファーをもらってもあまり受けてなかったんですけど、これは「ぜひやりましょう」って言ってきて。SALUさんは声が独特だし、おもしろかったですね。歌詞はSALUさんから「こういうテーマでお願いします」ということを丁寧に説明してもらって、1日で書き上げました。SALUさんとはお会いしてないんですけどね。何度も曲を書いていただいてる方でも、基本的には会わないんですよ。

ーー作家の方には会わないで制作するという方針なんですか?

中島:会うのがイヤだというわけではないんですけどね。たとえばレコーディングに作曲家の方がいらっしゃると「上手く歌えてるかな」と緊張しちゃうんですよ。

ーーなるほど。映画『NANA』でコラボレーションしたHYDEさんとはステージで共演してますよね?

中島:そうですね。HYDEさんは唯一、レコーディングのディレクションもやっていただいたんです。HYDEさんが他のアーティストに楽曲を提供したのは、後にも先にも私だけでしょ? だからHYDEさんも楽しみにしていたみたいで。どのテイクを選ぶかは以前からずっと任せていたから、HYDEさんがスタジオに来てくれたときも、歌い終わったら「あとはよろしくお願いします」って帰っちゃったんです。そのときのことをいまだに言われるんですよ、HYDEさんに。トリビュートアルバム(2016年2月にリリースされた『MIKA NAKASHIMA TRIBUTE』)のためにいただいたコメントにも“知らない間に帰ってた”(「歌録りの時は「何て綺麗な声なんだろう」ってディレクターと盛り上がって楽しいレコーディングになりました。あなたは知らない間に帰ってましたけど(笑)」)って(笑)。

ーーさらにライブ音源「花束〈Live at NHK Hall 2016 07.22〉」も収録されています。先ほどから話に出ているアコースティック・ツアーの貴重な音源ですね。

中島:スタッフのみんなが「いい」と思って収録してくれたんですけど、私自身は(ライブ音源を)あえて聴かない時の方が多いんですよ。どこが悪かったかは自分でわかってるから、CD音源を聴いて(歌い方を)「次はここをもう少しこういう風に歌おう」とか自分で答え合わせをしながら直すほうが、しっかり頭に入って合ってるなって。だから、たまに曲の構成を確認するために「リハの音源を聴かせて」って言うと、まわりが「え?」ってなるんです(笑)。

ーー現在の中島さんの歌の魅力が伝わるテイクだと思います。オリジナルアルバム『REAL』(2013年1月)から約4年になりますが、次作の構想はあるんですか?

中島:そうですね…。何て言うか、自分の在り方がちょっとわからなくなってるんですよ(笑)。15周年のときに「どうしたい?」と言われたときも、「さて、どうしよう?」って考え過ぎちゃって。ライブ以外では、何を発信していいかわからないというか。ずっと考えてるかも(笑)。

ーーMIKA RANMARU、アコースティック・ライブを含めて、いままでとは違うスタンスの活動も増えてますけどね。

中島:そういう違う要素が加わるのはいいですよね。ずっと同じ人たちと同じことをやってると、どうしても幅が広がらないので。音楽以外のことでやりたいことはあるんですけど、一から始めなくちゃいけないから、なかなか難しいし。焦らず自分のペースでやっていきますよ。

ーー期待してます。最近、プライベートはどんな感じですか?

中島:寝すぎですね(笑)。ヘンに体温が上がって、ボーッとしちゃってます。私、丸1日くらい平気で寝ちゃうんですよ。3日休みがあると、1日は絶対に寝る日を作って、ずっと寝てる(笑)。寝る、寝ないっていうのをコントロールできるというか、寝ないって決めれば平気だし、寝ようと思ったらずっと眠いんですよ。そうなると日にちもわからなくなって、じつは今日もお休みだとカンチガイしてたんですよね(笑)。メールもらって「あ、仕事だ!」ってなったんだけど、鏡の前で30分くらい体育座りしてて。だから今日はマスカラしか塗ってないんです。

ーーナチュラルメイクですよね、珍しく。

中島:普段はしっかりメイクをしているときが多いですからね。0か100かだから、やらないときはやらないし。でも、みなさんのほうがしっかりメイクしてると思うんですよね。ナチュラルに見えるお化粧でも、じつは1時間くらいかけてやってるんでしょ? それは逆にすごいなって思いますね。私が1時間メイクしたら、ドラッグクィーンみたいになっちゃうから(笑)。

(取材・文=森朋之)

■リリース情報
『Forget Me Not』
発売日:2016年11月2日(水)
初回生産限定盤(CD+DVD):¥1,500+税
通常盤:¥1,165+税

<CD収録内容>
1. Forget Me Not
※映画「ボクの妻と結婚してください。」主題歌
2. ビルカゼスイミングスクールfeat. SALU
※アクションRPG「追憶の青」イメージソング
3. 僕が死のうと思ったのは <Live at NHK Hall 2016.07.22>
4. Forget Me Not <Instrumental>

<DVD収録内容>
1. Forget Me Not MUSIC VIDEO

■関連リンク
中島美嘉オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる