フランチェスコ・トリスターノ&デリック・メイが語る、天才同士の信頼関係が生んだ化学反応

F・トリスターノ&D・メイ、“天才同士の化学反応”

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「敬意とクオリティだけは忘れないでいたい」(デリック)

ーーデリックは20年間自分の曲を作ってなくて、今回共作とはいえ本当に久々に自分のオリジナル曲を作ったわけですよね。そうさせた最大な理由は、やはりフランチェスコの存在だったんでしょうか?それとも別に思うことがあったんですか?

デリック:たまにちょこちょこランダムなことはやったけど、これは僕のある意味、「サビた自分から抜け出す」パーティーなんだよ!

フランチェスコ:確かにパーティーだね!(笑)

デリック:そうだった、確かに。オーケストラとの共演で食欲が湧いたんだ。最初は(オーケストラとやるのに)気が進まなかったんだ。100%乗り気だったと勘違いしてほしくないね。すごく説得される必要があったんだ。マケドニアのスコピエという街のオグデンという友人にすごく説得された。でオーケストラをやって。最初の頃はフランチェスコは参加してなくて、後から来たんだ。一緒にやって欲しかったし、彼がいたらショーに素晴らしい要素が加わると思ってた。でも彼のスケジュールもあって、いろいろ待たなくちゃいけなかった。

ーーなるほど。

デリック:で一旦彼が入ってからショーには新たな一面が加わって、自分でまた音楽を作り始めることに対してのストレスや恐怖がなくなったんだ。それで、今回のプロジェクトを彼が企画して、僕とも楽しく共演して仲良くなって。彼からプロジェクトに参加しないか聞かれた時には「お~、やるよ!」って即答した。ふだんなら絶対やらないことをやることにしたんだ。正直そんなに簡単じゃなかったし、タイミングの問題もあった。でも彼は僕に対してすごく辛抱強く接してくれたし、結局うまくいったんだ。

ーー良かったです。

デリック:でも、覚えておいてもらいたいのは、これは彼の作品……フランチェスコのプロジェクトだということだ!

フランチェスコ:めちゃくちゃすごいフィーチャリング・アーティスト付き(注:デリックのこと)のね!(笑)

ーーフランチェスコはカール・クレイグとかモーリッツ・フォン・オズワルドとか、そういうエレクトロニックのミュージシャンと共演してレコードも作っていますね。その時の作業と今回の作業と、どういうところが違いましたか?

フランチェスコ:同じだね。音楽……食べ物みたいに。リズムがあり、メロディーがあり、音色、音質、ハーモニーがあって、だから……使い方が変わるだけ。料理に例えると、ニンニクがあったら……イタリアンパスタを作るか、中華鍋で餃子を作るか……同じ材料でもね……。

ーーフランチェスコは非常にボーダレスで、それこそクラシカルからエレクトロニカから、いろんなジャンルをまたいだ音楽を作っていますね。そうした自分の音楽性はどうやって形作られたんでしょうか。

フランチェスコ:僕はバッハみたいなクラシカル・ピアノを勉強してたけど、母親がいつも聞いてたのはピンク・フロイドとかジャン・ミッシェル・ジャールとか。まぁ、ヒッピーというか60年代のニューエイジだね。喜多郎とかね。だから僕にとって音楽は音楽で、自由で、ボーダーがないんだ。ジャコ・パストリアスの言葉を思い出すけど、彼が音楽教育番組で全ミュージシャンへのアドバイスはあるかと聞かれた時の答えが「マインドを開け」だった。それ以外希望するものはないよな。僕は感謝されたり評価されることを求めてはいないいけど……誰かの心に触れられたらいいね。

FRANCESCO TRISTANO P:ANORIG Feat. DERRICK MAY Live in Berlin

ーーアルバムが完成しましたが、今後このプロジェクトはどう発展していくんでしょうか。

フランチェスコ:もっと良くなるかわからないけど、変わっていくのは確かだね。デリックも同感だと思うけど僕にとって音楽は時間で止まるものではない。音楽自体もリズムがあり、自然のペースで動くものだ。ただ、CDをつくらなくちゃいけないから、その瞬間だけは色々いじるのをやめるけど、頭の中とかステージ上では音楽の進化は続くよ。まさにそれをアルバムでも伝えたいんだ……たくさんのライブ・テイク……僕らのセッションは基本的に、彼(デリック)が来てプレイし始めて「まだ録音するな! まだ、ただ音をいじってるだけだから録音するな!」と言うけど、もちろん僕はすでに録音してる(笑)。でも、よくそれが一番良いテイクだったりもしたしね。なので今回ポスト・プロダクションはすごく少なかった。 ライブのテイク……長いテイク……時によっては1時間のテイク……2時間のテイク……それを絞ってエディットしつつ、ライブのフィーリングも残したかったんだ。

デリック:これはチャレンジだったよ。ただただ新しいものとか、変わったものを作るのではなく、今までと同じでありながらもユニークなものを作ること…...。そして音楽を作るための抱負な知識と歴史を表現するというチャレンジだ。経験があるからといって、ソフィスティケイトされた完璧なものを作り上げるだけじゃなく……わかるかな?

ーーええ。デリック、今回はフランチェスコのプロジェクトでしたが、自分一人のプロジェクトをやる気になりました?

デリック:間違いなく、100%ね。でも過去には戻れない。あの音楽を作ったデリック・メイにはなれない。どこに行くか先に進んでみないとわからないよ。方向もなく、地図もなく、目的地もないから。

ーーーじゃあ、具体的なことはまだ言える段階ではない……。

デリック: そう。でもどんなものであろうと……敬意とクオリティだけは忘れないでいたいね。

(取材・文=小野島大)

■リリース情報
『Surface Tension』
発売:11月23日(水)
価格:2,570円(税込)

<収録内容>
. Sakamoto: Merry Christmas Mr.Lawrence(Francesco Tristano Rework)
2. The Mentor (feat. Derrick May)
3. Pacific FM
4. Infinite Rise (feat. Derrick May)
5. In Da Minor (feat. Derrick May)
6. Rocco's Bounce
7. Xocolad
8. Esoteric Thing (feat. Derrick May)
9. Day in BKK (Live) ※bonus track
10. Ginseng (feat. Derrick May) (Live) ※bonus track
11. Pacific (Studiovacanze Dub) ※bonus track

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