“転売ヤー”取り締まりはなぜ難しい? ネット上のチケット高額転売の法的論点を弁護士に訊く

“転売ヤー”はなぜ規制できないのか

 このように、アメリカでもある一定の行為に対しての法整備にとどまっており、高額チケット転売全体をカバーする対策は難航しているという。では、高額転売はどのようにして防いでいけばよいのか。

「先ほども例に挙げた『ハミルトン』では、二次流通でのチケット価格の高騰を受けて、最高額のチケットの正規価格をブロードウェイ史上最高の849ドルまで値上げましたが、ネットではその10倍を優に超える1万ドルで取引されている例もあるようです。日本に比べてチケット価格の高騰が顕著なアメリカでも高額転売が問題になっていることからも分かる通り、一定の効果はあるでしょうが、チケット価格の値上げだけで問題は解決しないでしょう。しかし、残念ながら法的に抜本的な解決策があるわけでもありません。高額転売禁止の周知、やむを得ない事情で転売する場合に利用できる公式ルートの整備、入場時の本人確認の徹底などの可能な手段を尽くす以外ない、というのが現状です。今回の意見広告のように業界やアーティストがチケット高額転売を問題視しているんだということを広く知らせるなども一つの防止の手段としては意味があるでしょう」

 10月12日放送の『クローズアップ現代+』(NHK総合)でも「追跡!チケット高額転売の舞台ウラ」という特集が組まれ、コンサートやスポーツ観戦、テーマパークチケットなどの転売の実態について報じられていた。番組終盤にはジャーナリストの津田大介氏と弁護士の福井健策氏の解説のもと「高額転売を防ぐ方法」として、「本人確認の徹底」「高額転売の法規制」「価格の弾力性」の3点が挙げられた。問題の解決について考えれば考えるほど、多様な論点が浮かび上がる『チケット高額転売問題』。すべてを解決することは極めて難しい。しかし、各論点にひとつひとつ対処していくことで、チケット販売・流通システムの理想形に少しずつ近づけるのではないだろうか。

(文=編集部)

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