野田洋次郎がillionで掴み取った“個”の音楽ーー10月12日発売の注目新譜5選

高橋みなみ『愛してもいいですか?』(AL)

 男友達に恋してしまった女の子の葛藤を描いた「カガミヨカガミ」(作詞・作曲/槇原敬之)、切なく、ロマンティックな恋心をノスタルジックに歌い上げた「愛しくて恋しすぎて」(作詞・作曲/高見沢俊彦)、OKAMOTO’Sとのコラボレーションによるロック歌謡「夢売る少女じゃいられない」(←タイトル上手い!)、シンプルな言葉に人生の普遍を刻み込んだフォークロックナンバー「笑顔」(作詞・作曲/真島昌利)、さらに岸谷香、前山田健一、来生えつこ・来生たかおといった豪華な作家陣が参加した1stソロアルバム。AKB48の絶頂期を支え、強烈なリーダーシップと愛すべき人懐っこさを不思議なバランスで共存させてきた高橋みなみの存在は、ジャンル・キャリア・年齢に関係なく、あらゆる人を惹きつける魅力を持っているーーこのアルバムを聴いて最初に感じたのは、そのことだった。彼女のキャラクターをさまざまな角度から描いた楽曲も聴き応え十分。実像と偶像をリスナーに想像させるプロダクションは、まさにアイドルポップスの王道だ。

グッドモーニングアメリカ『ノーファング』(SG)

 キャラクターデザインを貞本義行(『新世紀エヴァンゲリオン』『サマーウォーズ』)、ストーリーを鈴木理香(『アナザーコード』『ウィッシュルーム』)が手がけたことで話題を集めているスマートフォン用サスペンスRPG『Black Rose Suspects』のメインテーマ曲「ノーファング」、オープニングテーマ曲「クラスター」を収録したニューシングル。表題曲「ノーファング」は<牙などない僕はこの手で/生きる事に獅噛み付いてる>というフレーズから始まるロックナンバー。重厚な手触りとヒリヒリとした疾走感を併せ持ったバンドサウンド、“絶望も希望もないが死ぬのは怖い”という心理状態と生々しくリンクしたメロディラインがひとつになったこの曲は、現代社会のシリアスな病巣とロックミュージックの突破力、爆発力を同時に表現したという意味において、グッドモーニングアメリカの新機軸と言えるだろう。(まるで映画の劇伴のような)スリリングなストリングスから始まる「クラスター」も新鮮。このシングルがグドモの新たなブースターになることを願う。

グッドモーニングアメリカ「ノーファング」

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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