BOYS AND MEN「YAMATO☆Dancing」、楽曲に隠された「面白さ」を分析

 そして、Aメロのポイントはベースラインにある。イントロに比べて音数を減らし「デン、デン、デン」と中央で鳴るベースに耳がいくような設計になっている。そしてここで、あえてとてもチープな音色が選ばれている。この「安さ」が効いている。デビューのタイミングでは、あえて「安い」シンセベースの音色を用いて親しみやすさを演出する。それはジャニーズWESTの制作陣が「ええじゃないか」で用いたテクニックだ。

 さらにそのベースラインが導く形でブリッジの「でら調子いいわ! でら調子いいわ!」に繋がる。もちろん方言で「名古屋発」をアピールするセリフだ。ちなみに、このセリフは、曲が進むと「でら気合入れてくぜ」「でら本気だから! でら本気だから!」「でらイケててごめんね!」と展開していく。筆者は関東出身なので名古屋弁の「でら」の使い方としてどこまで正確なのかわからないのだが(読者の方で名古屋出身の方いたらツイッターなどのコメントで教えてほしい)、とにかくインパクトは十分だ。

 歌詞もかなりユニークだ。ここに色濃くヤンキーテイストを盛り込んでいるのがボイメンの個性と言っていい。歌詞のテーマは「男の生き様」と「仲間意識」。さらに「ただ我武者羅に食らいつけ(One chance)」「街の噂を独り占め(Fever)」「三倍速で駆け抜けろ(ウェイウェーイ)」などの素敵フレーズが並ぶ。一目見たら頭からっぽに見えるが、ちゃんと七五調になっているのが詞作上のテクニックだ。

 特に「三倍速で駆け抜けろ(ウェイウェーイ)」は、いろんなJ-POPの歌詞がある中でも、トップレベルでネジの外れたフレーズだと思う。

 きっとボイメンのファン以外も、聴いてみればこの曲の「面白さ」を味わえるのではないだろうか。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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