w-inds.が体現する“世界標準のJ-POP”ーー8月31日発売の注目新譜5選

高橋優『光の破片』(SG)

 9月3日、4日に地元・秋田県横手市で3万人規模のフェスを開催する高橋優の15作目のシングル『光の破片』は“10年後の自分から手紙を受け取った女子高校生が、未来に起きることを知りながら青春を生きる”という設定のTVアニメ『orange』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマ。楽曲の中心的なモチーフは、万華鏡。形が悪く、あまり綺麗とは思えないような一つ一つのカケラが他と組み合わさることで、無限の美しさを作り出す万華鏡を人と人の関係とリンクさせ、“一人きりで叶えられない景色”の尊さ、かけがえのなさを描き出している。カップリング曲の「TOKYO DREAM」では、いまの日本人の歪さ、愚かさ、浅はかさを真正面から歌っているのが、共通しているのは市井に生きる人々に対する視線。目の前にある光景を冷徹に見つめながら、そこに息づく人たちに対する温かい思いは決して失わない。その抜群のバランス感覚こそが、高橋優というシンガーソングライターの魅力なのだと思う。

高橋優「光の破片」

w-inds. 『Backstage』(SG)

 今年15周年を迎え、現在アニバーサリー・ツアーを開催中のw-inds.から「Boom Word Up」に続く2016年第2弾シングルが到着。最新のダンスミュージックをいち早く取り入れ、世界標準のJ-POP(矛盾している言い回しだが、彼らの音楽を聴くといつもそう感じる)を体現しているw-inds.だが、今回の楽曲「Backstage」も期待を裏切らない仕上がり。サウンドのベースになっているのはトロピカル・ハウス。さらにバウンシーなリズムを加え、J-POPらしい巧みな転調、“Come on!夏のBackstage”というキャッチーなラインを施すことで、幅広い層のリスナーが楽しめるポップスへと導いているのだ。しっかりと抑制を効かせたボーカルによって楽曲の魅力を引き出す橘慶太、それぞれのキャラを活かしたラップ/コーラスで華やかな色を添える千葉涼平、緒方龍一のパフォーマンスも的確。アーティストとしてのエゴを押し出し過ぎず、優れた音楽に近づこうするスタンスもまた、彼らの利点だろう。

w-inds.「Backstage」

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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