でんぱ組.incは新たなフェーズへ! 柴那典がニューアルバム『GOGO DEMPA』を徹底分析

でんぱ組.incが進む新たなフェーズ

 また、ニューアルバムの中で最も新機軸と言える楽曲が、中盤に収録された9曲目「アンサンブルは手のひらに」。作詞作曲を手掛けたのはCozy(Laika Came Back)こと車谷浩司。曲調はスウィング・ジャズだ。アップライトベースとピアノとホーンセクションによる豪華なサウンドに、ちょっとアンニュイな歌声を響かせる。でんぱ組.incの中でも“大人”な魅力を見せる一曲だ。

 ちなみに、現体制になってからの5年間の中で、最も目覚ましい成長を見せたのが、ピンキーこと藤咲彩音。彼女への単独インタビューでは、幼い頃から母親と二人三脚でコスプレイヤーとして活躍してきたがゆえに、自我がなかったことを明かしている。

「小学校に入ってから高校に入るまで自分の意志がなくて、特に子供の頃は、自分で考えるということを放棄してたんですよ。でんぱ組.incになった瞬間に自分の意見がないってことに気づいちゃって、『これは困ったぞ』と」(藤咲彩音、『IDOL AND READ』vol.5より)

 でんぱ組.inc加入後の「W.W.D」の頃も「自分自身で考えることができなくて、だから自分がわからない」と言っていた彼女が「ちゃんと自分の頭で客観的にいろんなことを見ようと思った」のは、武道館公演を経た2014年になってからのこと。今では卓越したダンスパフォーマンスでグループを引っ張る存在になっている。

「ちゃんと船頭に立てる人間になりたいなと思います。好きなことをまっすぐ続けたらいろんな仕事につながるってことをちゃんと自分で証明できたから」(藤咲彩音、『IDOL AND READ』vol.5より)

 こうして成長を重ね、ファン層を広げ、音楽性も豊かになってきた今のでんぱ組.inc。しかし明らかに満ち足りていない表情を見せるのが、「金色の異端児」最上もがだ。今年春に行われたインタビューでは、こんな発言もあった。

「今、でんぱ組.incって売れてると思います?」

 売れてると思いますよ、と応えた筆者に対して、彼女はこう言い放つ。

「ぼくは売れてるとは思ってないです。それは、周りにもっと上の人がいっぱいいるからなんですよ。たとえばセカオワ(SEKAI NO OWARI)とも仲良いし、きゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんも友達だし。そういう人たちとは桁が違うんで。今の現状で満足しているようなら上には行けないし、今の現状に満足全く出来ないんですよ。そのためには、どうすればいいかってすごい考える」(最上もが、『IDOL AND READ』vol.6より)

 現体制となって5年目を迎えたでんぱ組.inc。アイドルグループとして着実にキャリアを重ね、音楽としてもカルチャーとしても刺激的なチャレンジを繰り広げてきた。『GOGO DEMPA』はその結晶としての一枚である。

 が、まだでんぱ組.incが完成形に辿り着いたというわけではない。6人がこの先も「攻め」の姿勢を持って突き進んでいくことは、おそらく間違いなさそうだ。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

■リリース情報
『GOGO DEMPA』
発売:2016年4月27日
【初回限定盤】 ¥3,611(税抜)
[CD+DVD]
・Music Video
1.「超絶ウルトラ☆Happy Days」
2.「ギダギダdaズバズバda!!」
3.「おつかれサマー!」
4.「ムなさわぎのヒみつ?!」
5.「あした地球がこなごなになっても」
6.「アキハバライフ♪」
7.「STAR☆ットしちゃうぜ春だしね」
※メンバーによる副音声コメンタリー付き
・LIVE MOVIE

【通常盤】 ¥2,778(税抜)
[収録曲]初回限定盤、通常盤共通
01.GOGO DEMPA
02.破!to the Future
03.ファンファーレは僕らのために
04.惑星★聖歌 ~Planet Anthem~
05.STAR☆ットしちゃうぜ春だしね
06.アキハバライフ♪
07.おつかれサマー!
08.永久ゾンビーナ
09.アンサンブルは手のひらに
10.きっと、きっとね。
11.Dem Dem X'mas
12.ムなさわぎのヒみつ?!
13.キボウノウタ
14.ユメ射す明日へ
15.あした地球がこなごなになっても

■オフィシャルサイト
http://dempagumi.dearstage.com/

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