欅坂46「サイレントマジョリティー」の突破力! 楽曲とMVの創作意図を読み解く

 「サイレントマジョリティー」のカップリングでは、1970年代の歌謡曲のような「山手線」(TYPE-A収録)に驚きました。しかし、衝撃的だったのはやはり「渋谷川」(TYPE-B収録)という楽曲の存在です。そもそも、4種類ある「サイレントマジョリティー」のジャケットは、すべて渋谷川で撮影されたもの。そして、「ラブ&ポップ」のラストで主人公の女の子たちが歩くのも渋谷川なのです。「渋谷川」と題されたフォークのような楽曲を聴くに至って、欅坂46の制作チームの手のひらの上で自分が転がされているかのような感覚に陥りました。「ラブ&ポップ」を踏襲したかのようなストレートなコンテクスト(しかし性の匂いは完全に封印されている)が存在する一方で、歌詞とグループの存在にはギャップもあり、それが混在しながら欅坂46というグループを世に送り出しているのが「サイレントマジョリティー」というシングルなのです。

 「サイレントマジョリティー」のMVをはじめとして、欅坂46はまさに大資本が投下されているアイドルグループです。ふだんライブハウスでインディーズのアイドルを見ていることが多い私のような人間にも「サイレントマジョリティー」のMVが届いたことは、かなりの突破力があることの証拠でしょう。欅坂46のデビューは、メジャーアイドルとインディペンデントなアイドルとに、アイドルシーンがさらに二極分化していく予感さえもたらしました。今後のメジャーなアイドルシーンを牽引する存在になるであろう欅坂46が、「サイレントマジョリティー」で打ち出したソリッドなイメージのもとでいかに活動していくのかを楽しみにしたいです。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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